冒険記録日誌
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| 2009年12月03日(木) |
魔界の呼び声 呪いの首塚村(文:森下紀彦、絵:佐藤惟史/学習研究社) |
しばらく前に捨てる予定の荷物を整理していたら、一冊見覚えのないゲームブックが出てきました。それがタイトルの本です。 小さい頃に遊んだ覚えもないけど、身近な人間でこんな怪しげな古本を買う人間が自分以外にいるとは思えないので、10年くらい前に盛んに古本屋めぐりをした頃の戦利品がはぐれてしまったのでしょう。 しかし学習研究社とは懐かしい。 前に冒険記録日誌で、学習研究社のゲームブックの話題を出したのは、「名探偵ホームズ 鬼岩城の謎」で日付は2002年3月13日。これは冒険記録日誌最初のネタですよ。(ちなみに3月1〜12日は後日追記したもの)
まあ、そんなことはどうでもいいとして、「魔界の呼び声 呪いの首塚村」。 いかにもおどろおどろしさが感じられる良いタイトルですね! プロローグあたりを読むと、由起と慎一という2人の少年少女が、謎の原因によって廃村となった首塚村を探索するという、ありがちな内容なんですが、それからが凄い。 呪いの首塚村に住む未知の住民どもは、一瞬だけ姿を見せて怯えさせるとか、異様な雰囲気だけ匂わすとかいった、日本的な奥ゆかしい恐怖演出をしようなどとは欠片も考えていないようです。ゲームが始まったとたん化け物の姿を表し、スプラッタ映画のごとく、次々と主人公たちに襲いかかってきました。 登場した妖怪の名前をざっとあげるだけでも、舞い首、首なし観音、二口女、死人返り、亀坊主、四ッ手頭、妖鳥、濡れ髪、火炎車、蛇少女、などなど盛りだくさん。(このゲームブックは1パラグラフ毎に1ページを割いて文章とイラストを載せているタイプなので、全ての化け物の姿を拝むことができます) 非力な少年少女では、どうにもならない化け物ばかりなので、大抵の場合はひたすら逃げるしかありません。そして逃げた先では、当然のように新たな妖怪が待ち構えているので、妖怪が登場しないパラグラフの方が珍しいほど、気を休める箇所がありません。ゲーム中に一度でも選択ミスをしたら即座にデットエンドという厳しい二択が当然のように続きます。 何ですって?片方がデットエンドの2択続きじゃ、ずっと一本道の展開じゃないかって?
喝!
シナリオの分岐なんていうのは贅沢の極み! ただ、生き残ったことを泣いて喜ぶべきです。 生きてさえいればいずれ数か所くらいは分岐する機会があるので、欲しがりません勝つまでは!くらいに気合いを入れてそれまで耐え抜きましょう。 これは序盤のうちから容赦がなく、ゲームオーバーになると、謎のナレーションが、ごく簡単な忠告とともに励ましてくれます。
───まだ村へも入らないうちから、こんなことになるとは。キミの軽率さには、妖怪もビックリしていることだろう。もっと慎重になれ! ───運が悪かったのだといえば、それまでだがこれから面白くなるという時に、まったく残念なことだ。冒険はまだ続く。キミの再チャレンジをのぞむ。
このゲームにランダム性がないのが、救いといえば救い。総パラグラフ数178の作品ですし、諦めずに繰り返していれば、ズルなしでもいずれは先に進めます。 物語も中盤にさしかかると、プロローグで伏線程度の情報があった京子という女が仲間になり、村がこうなった原因とその解決策を教えてくれます。 何か含むところがありそうな女ですが、この狂った展開よりは理性があるぶん、しがみつきたくなる気分ではあります。どのみち疑って別行動をとろうものなら、次のパラグラフで唐突に登場した妖怪に踏みつぶされてデットエンドですから、選択の余地があろうはずもなく。 妖怪どもの攻撃はあいらわず厳しく、ゲームオーバーの都度に見る、主人公の少年少女の殺害された死体イラストがちとグロイ。もちろん謎のナレーションも引き続き叱咤激励をしてくれます。
───キミは妖怪にわざと負けているのか?そうでなければよっぽど運のないヤツだということになる。もう少し頭を使ってほしい! ───慎一を失った由起と京子に妖怪を倒す力はない。こうなったのも、元はといえば、キミがゲームで失敗してしまったせいだ。反省をのぞむ!
終盤はこの呪いの首塚村のラスボス魔猿との戦いが中心ですが、斬妖剣や魔照鏡なるアイテムを入手した由起と慎一も、真っ向から立ち向かいます。 他の妖怪たちのように一回の選択肢では勝敗が決まらず、盛り上がってまいります。デットエンドにいくと謎のナレーションにも一段と気合が入ります。
───由紀と魔照鏡を失ったキミに再起する気力はない。もちろん恐ろしい魔猿に勝てるわけはない。おとなしく家に帰って、イイ子にしていたほうがいい。 ───最後までたどりついたと思ったら、結局キミは魔猿に負けてしまった。緊張の連続で頭がボケてしまったんじゃないか?顔を洗って1から出直しだ!
魔猿が崩れ落ちると、ついにエピローグ。これは4種類に分かれていて、仲間も含めて全員生き残ることができた場合は、一番良い結末に到達することができます。
本書はなかなかインパクトが残る内容と思いますね。本書の読者対象年齢と思われる小さい子なんかにとっては特に。 実際、Webを調べてみるとマイナーそうな作品にもかかわらず、小学生の時に読んだというコメントと合わせて、この作品を細かく解説した専用コンテンツを載せているページを発見しましたし。 たまにはこんなゲームブックもいいもんです。
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