冒険記録日誌
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| 2009年12月02日(水) |
激走!バトル・ロード(スティーブ・ジャクソン/ボビージャパン) |
この作品はアメリカ側のスティーブ・ジャクソンの書いたゲームブックですが、ファイティングファンタジーシリーズの一つではありません。「カーウォーズ」という作品の世界とルールを使った、TRPGのソロシナリオなのです。 カーウォーズとはアメリカのスティーブジャクソンが製作したTRPGの一種で、近未来を舞台に武装した車を乗りまわす、カーバイオレンスアクションというのが売りになっています。 映画マッドマックスのような、と表現してもいいですが、よくリビングストンの「フリーウェイの戦士」(2002年4月8日の日記に紹介済)がマッドマックス風のゲームブックといわれます。 カーウォーズの世界では全人類の文明が崩壊するような核戦争も大天災も未知の伝染病も発生しておらず、現代とは文明が多少進歩している(例えばこの世界では電気自動車が標準)くらいの違いしかありません。 いってしまえば、カーウォーズがマッドマックス1で、「フリーウェイの戦士」がマッドマックス2というところでしょうか。
そんなわけで「激走!バトル・ロード」の主人公は、世紀末覇者というわけでもなく、高額の報酬と引き換えに危険な任務を引き受ける仕事をしているようです。 そして今回の依頼は、陰謀によって監禁にあい、明日にも強制結婚をさせられる運命にある大統領の娘を救出すること。 こうして主人公は前金5千ドルを受け取り、標準武装したピラニヤという車に乗って出発するところからゲームははじまり、冒険の大半は、出発時点から結婚式予定会場であるツーイーグル農場までの移動シーンに割かれていました。当然ながら街を一歩離れた道中は、悪質な暴走族が日夜問わずに出没する危険地帯です。
こう書くと、前述で触れた「フリーウェイの戦士」と大まかな内容が似ている気はしますが、あちらにあった慢性的な燃料不足問題が、ここではあまりないので、難易度的にはかなり楽な冒険になっています。 基本的にどの道のルートを通っても問題はなく、敵と戦おうが逃亡を優先しようが、道端に不自然に停車している車を無視しようが、多少は先の展開に有利不利の影響が出るものの、クリアに致命的な問題とはなりません。受ける影響も納得できる内容ばかりなので、不条理な気分にはならないでしょう。 自分の思い通りに選択肢を選んで遊べるのが気分がよく、この辺はさすがアメリカのスティーブ・ジャクソンの作品と思います。
それから本作品には時間経過の概念があり、冒険中は行動のたびにこれが加算されていきます。 時間経過の要素としては、街で情報収集など人との交渉、車の装備やメンテナンス、敵との戦闘などなど。車で走っているときも、危険を冒して速度をあげるほど時間を節約できるかわり、もし運転技能の判定に失敗すれば事故になり、却って時間がかかってしまいます。 もちろん寄り道がすぎると、結婚式がおこなわてしまい任務失敗。このあたりの判定はシビアなので、戦闘の次に警戒する要素です。
もう一つのこの作品の特徴はカーウォーズらしく、敵からバイクを奪ったり街で車を購入するなどの手段で、車を乗り換えながら冒険を続行することも可能ということ。すでに乗っている車にも、街で各種の武器を装着することでカスタマイズが可能です。 ただ自分の場合は、このへんの楽しみは味わえませんでした。というのも、このゲームは自分の任意で能力を割り振りできたため、運転技能に全てのポイントを集中させる作戦に出ていたのですが、これが当たったのか情報収集を重視した進行が良かったのか、なんと一度も戦闘に突入することなく、クリアできてしまったからです。 そうゆう意味ではもっと難易度があっても良かったかもしれませんが、暴走族どもをなぎ倒せば、立ち寄る街で住民たちから拍手喝采を受けるという気分のいい展開も味わえるので、バイオレンスな展開にしたい人は逆に射撃技能と財産にポイントを割り振って、重装備の車でわざと敵地に突っ込むのも一興かもしれません。
蛇足ながら、「フリーウェイの戦士」も各種演出が秀逸な、屈指の名作と思っていますので、遊び比べると両作者の書くゲームブック作品の特徴がよくわかって面白いのではないでしょうか。
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