冒険記録日誌
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| 2009年10月09日(金) |
1999年のドラキュラ伯爵(スーパー頭脳集団アイデアファクトリー/桐原書店) |
(ネタバレ注意!プレイ予定の人は……読んで覚悟ができた人のみ遊んで下さい)
マニアックなゲームブックファンなら知っている謎のゲームブック製作集団、スーパー頭脳集団アイデアファクトリー!その第二弾の作品ですよ!ヒャッハー! と無理やりにでも気分をハイにしないとこの作品のことは語れません。もちろん大好きなんですよ?だって、無難にまとまった退屈な作品より、特徴ある作品の方が印象に残るし面白いじゃないですか。ファミコンゲームだと「たけしの挑戦状」とか伝説のクソゲーと言われながら、なんだかんだと愛されていますよね。「1999年のドラキュラ伯爵」は名作とか駄作というレベルの評価を超えて異次元空間の反宇宙にまで到達した作品なのです。 もっともこの作品については、すでに他の方のサイト「麻呂的選頁遊戯本展示室」で素晴らしすぎるレビューが書かれておりますので、今さら何も書きようがないというのが本音です。 そこでこの冒険記録日誌では趣向を変えて、少々理解が難しいこの作品の特殊設定やらなんやらを合理的に解釈するスタンスで解説していこうと思います。
麻呂的選頁遊戯本展示室 http://www15t.sakura.ne.jp/~mope/gb/gbc.html
1999年のドラキュラ伯爵 http://www15t.sakura.ne.jp/~mope/gb/004.html
まずストーリーですが、簡単に言うとノストラダムスの大予言により世界滅亡がささやかれる時代に、世界征服をたくらむドラキュラ伯爵の末裔がヒマラヤ山中に出現。主人公はこの吸血鬼を退治に、単身ヒマラヤ山中のクレバスから洞窟に潜入し、その奥深くにあるという地下城に乗り込むというものです。 ここで、なぜドラキュラがヒマラヤに?なぜにそんな辺境に立てこもりつつ世界征服を?ヒマラヤ山中の洞窟の奥深くにどうやって巨大な建造物を建てたの?という常識的な疑問が次々に湧いてきますが、きっと答えはあるはずです。この謎のプロゲームブック製作集団スーパー頭脳集団アイデアファクトリーは、別のゲームブックでも夢オチというアイデアをおしげもなくエピローグに持ってきて、しっかりとストーリーの整合性をはかっていました。 今回もゲームプレイをしてみれば、次々に主人公に襲ってくる敵の中に、未知のテクノロジーの産物と思われる機械類に囲まれた部屋で宇宙人が登場します。また最終的なボスであるドラキュラ伯爵の部屋も同じような機械類に囲まれ、「まるで宇宙船の内部のようだ」のような表記があるのです。そしてイラストを見る限り、吸血鬼は巨大モニターのついたコクピットのような前で椅子に座っていました。おそらくは吸血鬼と宇宙人はなんらかの技術的な協力関係をとりつけたに違いありません。 こうなると、ヒラヤマ山中に閉じこもっているように見えるのも、あえて人里離れた場所で人目を避け、世界征服に向けたハイテクノロジーを駆使した極秘準備をしていたと理解できます。きっと行動をおこすときは、吸血鬼が部屋のスイッチを入れるだけであの巨大な城が宇宙船となり、洞窟を突き破って飛び出すのでしょう。 さらにこの作品ではバラエティー豊かというか、中国人のような格闘家、インド人のような蛇使い、猿のような化け物など一風変わった敵キャラが次々と無国籍に登場してきます。その理由は、大天使ガブリエルまで敵として登場したところで理解できました。これも世界滅亡というノストラダムスの預言が影響しており、吸血鬼はガブリエルの意見も参考にして、巨大宇宙船をノアの箱舟に仕立てようとしているのです。世界を征服するというのは世界を一度滅ぼして、自らが選んだ者たちだけを繁栄させる計画だったのです。そのため彼のいうことを聞く者ならすべて受け入れ、浅く広く多くの種族をきたるべきときに備えてあの地下空間に住まわせていたという解釈ができます。 こう考えてみればこの作品の設定やストーリーに潜む、隠された深いテーマが理解できましたでしょうか?
続いてはゲームバランス的な話しです。 まずこの作品では主人公が異様に強い。戦闘ルールはファイティングファンタジーシリーズのものに近いのに(運試しのルールは違いますが、あまりの強さに戦闘中に運試しをする必要はまずありません)、主人公が14+サイコロ2個の数値で技術点を決定しているのに対して、敵キャラは一番強いものでも「技術点7 体力点8」の強さしかなく、サイコロを振るまでもない戦力差です。(ボスである吸血鬼はアイテムの有無で勝敗が決まるため技術点は無関係) これは誤植の可能性が高いと愚考します。なぜなら主人公の体力点は8+サイコロ1個の数値で決定されるのですが、これは一般的なゲームブックから考えればかなり低い数値。ようするに技術点を決定する説明とここが入れ替わってしまったというわけです。プロ集団のスーパー頭脳集団アイデアファクトリーがそんなミスをするとは信じられない!と叫ぶ人もいるでしょうが、彼らも人間です。現実を見つめることも大事かと思います。 ま、その修正を加えても主人公は十分強い気もしますが、吸血鬼退治のためコンピュータに選ばれた選りすぐりの君が、現代版ノアの箱舟に乗ろうとやってきた寄せ集めの集団より、ある程度は強いのは当たり前です。おそらくこの作品はリアリティを大切にしているのです。洞窟や城で発見する品々や思わせぶりなヒントも大半は、まったく使用する箇所がないのもそれが理由です。敵の本拠地で、そうそう都合よく役に立つアイテムを偶然拾ったり、自らの身を危うくするアイテムを敵が簡単に配置するわけがないではないですか。 逆に、吸血鬼退治に絶対必要な3つのアイテムについては、そんなにいじわるな配置はされていないので、入手に苦労はしません。ゲーム的には優しい作りともいえます。敵をバッタバッタとなぎ倒し、手詰まりにならずにサクサク進める。つまりインディジョーンズばりの活躍が出来るゲーム性なわけですね。
最後にストーリーがちっともまったく盛り上がらない点。この作品は大半の敵キャラは無口ですが、ボスの吸血鬼も一言も喋りません。最後の戦闘も必要な3つのアイテムを持っているか聞かれ、持っていれば倒した。持っていなければここで負けたといわれるだけで、アイテムを使用する描写もカットされて非常にあっさりとしています。その意味では中盤で登場するニセ吸血鬼の方がセリフがあるだけまだマシです。またゲーム中にボスが吸血鬼である設定を生かした箇所というのは皆無で、これならタイトルが「1999年のフランケンシュタイン」でも「1999年の狼男」でも影響ないような気もします。 これはですね。そうだな、つまり……セリフのあった一部の敵を除いて敵は日本語を喋ることができなかったのです!ましてボスはルーマニアにいたドラキュラ伯爵の子孫であり日本とは縁がなかったのでしょう。これで納得です。この設定はさすがに少々こだわり過ぎですね。クスッ。 エンディングもファイティングファンタジーシリーズも真っ青の短さ。3行です。これは後半の疾走感あふれる展開の短さに合わせたのでしょう。こうゆうのはテンポが大事ですから。
このようにスーパー頭脳集団アイデアファクトリーは実にハイレベルな作品を提供してくれます。みなさんもなんとかこの本を入手して、是非この独特な世界に浸ってみられることをお勧めします。
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