冒険記録日誌
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2009年09月03日(木) 桃太郎活劇 エンマ大王の逆襲(大出光貴/双葉文庫)

 桃太郎ゲームブックシリーズ第5弾。
 このシリーズは全部で6巻まで出ています。一応は桃太郎が登場する一連のTVゲーム作品(さくまあきらさんの関わっている作品)が原作となっているのですが、登場するキャラは同じなのに、現代劇だったりファンタジーだったり、宿敵のエンマ大王がいい人の役どころになったりと、各巻ごとに設定はバラバラ。だけどどの作品も全編がギャグティストに満ちているという、まるで赤塚不二夫漫画の「おそ松くん」みたいな楽しいシリーズです。

 そしてこの「桃太郎活劇 エンマ大王の逆襲」は「桃太郎活劇」というPCエンジンのゲームを原作としています。原作は遊んだことはないのですが買い物などのアドベンチャー要素もあるアクションゲームみたい。冒険の目的は桃太郎が鬼退治にいくという、1作目以来のオーソドックスなもので、原点に戻ったともいえますね。
 ただ実際に遊んでみると、唐突に鬼が襲ってくることがやたら多く、戦闘回数がシリーズ中でもスバ抜けて多い気がしました。原作がアクションゲームなのを意識しているのでしょうか。戦闘ルールは双葉ゲームブックに多いバトルポイント表を使用したものです。
 勝負の判定に負けても即ゲームオーバーということは滅多になくヒットポイントが減るだけで、バランスが易しめに設定してあることは助かるのですが、鬼の登場>戦闘(勝つと戦闘力が増えてお金も得る)>鬼の登場>戦闘>村で休憩(装備や食べ物を購入する)>鬼の登場>戦闘(たまに中ボスが登場)という繰り返しがずっと続くので途中で厭きてきてしまいます。
 単調な迷路を延々とさまよう場面も、ゲームのテンポが壊れるだけで蛇足気味。どれもたぶん原作を忠実に再現したのだろうと思わせる作りではあるのですが、それが逆に失敗しているんじゃないかな。
 ギャグ要素の方はあいかわらず面白いです。文章自体がとぼけた調子だし、例えば金太郎飴で装甲しているという中ボスなんて、カタナでどこを斬られようと同じ金太郎飴が出来るからダメージはない!というわけのわからない理屈で強化されていて、笑ってしまいました。他に「ギャグじゃなかったら、今ので死んでたぞ!」とか「次の面、じゃなかった村へ行こう」のようなメタフィクショナルなギャグが多いも特徴です。
 シリーズ定番の脱力系のイラストも、あいかわらず内容とぴったり合っていていい。ヒロインの美鬼ちゃんはスタイル抜群の虎皮模様の水着姿で、なんだかグラビアアイドルみたいだなぁ。

 まとめていっちゃうと、いかにも双葉のゲームブックらしい長所と短所が両方出てしまった作品じゃないかという感想です。シリーズ2・3作目の「桃太郎電鉄」と「桃太郎電光石火」があまりに素晴らしかったので、比較するとどうしても見劣りはしてしまいますね。
 余談ですが、この作品のバトルポイント表はAからFのマスに1から6の数字を入れたものですので、この戦闘システムが苦手な私みたいな人はサイコロ1個で代用するというやり方もありだと思いますよ。


山口プリン |HomePage

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