冒険記録日誌
DiaryINDEXpastwill


2009年08月29日(土) ルパン三世 アムネジアの砂漠(吉本正彦、鎌田秀美/双葉文庫)

 本書は双葉のルパン小説本としては第四作目で、「アムネジアの砂漠」(吉本正彦作)と「イーヴル・シティへようこそ」(鎌田秀美)の二話を収録しています。

 「アムネジアの砂漠」は悪徳商人から特大ダイヤを盗んだルパンが、追っ手に攻撃されそのときのショックで記憶喪失になってしまうというストーリー。ゲームブックの方でも記憶喪失になった話しがあったし、前にあったTVスペシャルでも記憶喪失ネタがあったしで、ルパンは本当に記憶喪失になりやすい体質ですな。
 んで、ダイヤの所有者の部下に取調べられているルパンを、ダイヤの所有者の敷地内に、捜査協力を拒まれてこっそり忍び込んでいた銭型警部に発見され、なんだかんだあって二人で脱出するという展開で、そこに不二子が狙っている未発見のピラミッドの財宝をめぐる話しが絡んでという風に、盛りだくさんの内容になっています。
 もっとも盛りだくさんすぎて、記憶喪失の設定がルパンの能力を封印する以上の効果を出していないし、ピラミッド探索の様子も悪徳商人の雇った暗殺部隊の存在も、全部中途半端な扱いになっている感じ。読み終わったあと、全体に印象に残りません。TVスペシャルならまだしも、短編で扱うにはネタが多すぎましたね。

 むしろ本のタイトルにならなかった「イーヴル・シティへようこそ」の方がかなりインパクトのある話でした。世の中の大抵のお宝を盗んでしまい、もう目標がなくなったとかで、出だしからなんだか黄昏ているルパン。ルパンとは気づかすに、「逃げ出したリリアンという少女を探し出してくれ」と持ちかけてきた悪党の依頼を、何の気まぐれからか受けてしまいます。
 これがなかなかえぐい話しでして、リリアンという少女は非合法な児童ポルノビデオに出演する子なのでした。調査のためにルパンが入手したリリアンの出演するポルノビデオの中で、別の少女が麻薬漬けにされアソコに割れたビール瓶を突っ込まれたうえ、腹をナイフで裂かれて内臓を飛び散らせて殺されるというシーンが書かれています。昔、新聞の社会ルポで海外ではそんなことが実際にあると読んだことはありますが、今までのルパンに登場する悪党はいわゆる映画的なギャングばかりで、そんな生々しいことをする奴はいなかったですから、衝撃的でした。間違ってもアニメ化はできない題材でしょうね。
 そんな描写のせいもあるのか、全体的にシリアスかつ退廃的な雰囲気で物語は進行していきます。終盤までルパンは淡々と調査を続けていきますが、読んでいてなんともいえない重い気分になってきます。悲惨な展開も多く、最終的にはルパンが悪党たちに復讐を遂げて終わるものの、その痛快なはずのシーンはわずか1ページのオマケ程度にしか書かれておらず、フラストレーションが貯まってしまいました。
 また、ルパン以外のいつもの出演メンバーは登場せず、ルパンという名前すら、冒頭で自分がそう名乗っている他には一切登場しません。ルパン三世というより別のハードボイルド小説を読んでいる気分にさせる作品でした。


山口プリン |HomePage

My追加