冒険記録日誌
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| 2009年08月14日(金) |
太陽神の宝玉(原案:安田均 文:下村家恵子/社会思想社) |
「太陽神の宝玉」とはウォーロック50号に掲載されているゲームブックです。文庫化はされておらず、360パラグラフの作品ですが、この雑誌に今まで収録されていたゲームブックは、200パラグラフかそれ以下の作品が大半だったことを考えると、ちょっとした大作にみえます。
ストーリーは、タイタンのアランシアが舞台で、太陽神グランタンカを崇める一族の若者である主人公が、謎めいたローブの男のお告げを聞き、迷宮の奥深くに眠るという“竜の宝玉”を捜し求めるというもの。サムカビット公の治めるファングという街から冒険が始まっています。 この作品の特徴は、TRPGのアドバンスト・ファイティング・ファンタジー(以下AFF)のルールを使用していること。同社からはT&Tのソロシナリオゲームブックが何冊が発売されていますが、それのAFF版みたいなものと考えたらいいでしょう。あ、和製ゲームブックだけあって、T&Tのソロシナリオみたいに滅茶苦茶な罠や展開はないですよ。 通常のファイティングファンタジーゲームブックにある技術点、体力点、運点に加えて、各種スキルを覚えることができるので、結構個性的なキャラを作ることができます。TRPGのルールを使用しているだけあって、習得可能なスキルの数は半端なく多いのです。魔法スキルをとって魔法使いキャラにするのも、“素手戦闘”スキルを最大値までとって格闘家風のキャラにするのも自由で、まさにプレイヤーの思い通りのキャラが作れます。 しかし、ここで問題が一つ。いくらパラグラフが多めとはいえ、ゲームブックという容量の限られた今回の冒険では、どうしても沢山あるスキルを生かしきることができないのです。“感知”や“回避”のような危険にとっさに対応するスキルはまだしも、今回の冒険では“海の知識”とか“礼儀作法”のようなまったく出番のないスキルも結構ありました。 結果的にいつ必要になるかわからないスキルより、戦闘に直接役に立つスキル(武器を使いこなす能力とか、追加ダメージが増える“剛力”とか、相手の力を削ぐ“骨抜き”などの魔法スキルとか)を優先して覚えた方が、得になっているのが残念なところ。 実際にやっても、雪山や森の迷路などでは“森の知識"などの非戦闘系のスキルを生かしつつ、知恵と機転で罠や敵との遭遇を回避しながら進む、という攻略を期待していたのですが、次々と戦闘を繰り返す展開になることが多かったです。 ストーリー的にも終盤の展開を除いては、たんたんとした調子で旅と探索が続くだけ。そのうえ戦闘自体もダメージ量の判定とか、サイコロを振る数が少し多くて面倒なので、少々プレイがだるい感じでした。複数相手との戦闘方法を簡略化したり、魔法システムをマトリクス表を使って処理するなど、ルールに工夫はみられるとはいえ、ちょっと避けられない戦闘の数を減らしてほしかったな。 ほかにこの冒険はNPCの仲間一人と一緒に冒険できる(序盤の分岐によって出会う仲間が違う。望むなら一人で冒険してもいい)ようになっています。仲間がいれば戦力的にパワーアップするだけでなく、戦闘で負けても運試しに成功すれば、仲間が残りの敵を退治してくれることすらあり非常に楽チン。このぶんだとサイコロの目が悪くて能力の低い冒険者であっても、仲間がいて戦闘スキルが充実していれば、クリアはできそうです。 ただ、戦闘で死んでしまった場合でも、謎の存在によってすぐ生き返れたうえに、戦闘に勝ったものとしてそのまま冒険を続行できるシステムは、さすがにやりすぎな気が。あまり死にすぎるとクリア後に収得できる経験値が減るとはいえ、まじめにルールを守って遊ぶ気が萎えます。一本道シナリオで展開のバリエーションが少ないから、何度もプレイさせると苦痛になるだろうと思って、こうしたのでしょうか? (ただし戦闘で負ける以外のゲームオーバーは存在します。最初の冒険のときは、“ナンカ”という精霊にとりつかれて終わっちゃいました)
このように感想を書くと不満点も多いのですが、ラストは壮大な冒険へのプロローグという感じで嫌いじゃなかったです。タイタンのしっかりした世界観がバックについているので、もしも第2章、第3章と続編が出ていれば、日本版ローンウルフみたいな一大キャンペーンゲームにできた可能性はある作品でした。そうすれば今回出番のなかったスキルも続編で役にたったかもしれないですし。 もっとも、続編を予告するような記述がどこにもなかったので、もともと「続きはTRPGでやってください」という考えで、この作品は書かれたのかもしれませんね。
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