冒険記録日誌
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2006年02月11日(土) ブラッドソード3 悪魔の爪を折れ!(デイヴ・モリス オリバ−・ジョンソン/富士見書房) その3

(ネタバレ満載です。ブラッドソードをプレイ予定の方は読まないで下さい)

 ジャブロに教えてもらった宿へ向かい、大きな扉を押し開ける。
 大勢の波止場人足たちがサイコロ賭博をして遊んでいる。灰色の外套を着た男がその様子を熱心に見ていたが、バーガンたちに気がつくとあわててカウンターに走け戻った。
「紫の玉座の塔へようこそ!私が主人のアレクシスです。料金表をお見せしましょうか。そんなことは品位にかかわるといわれるなら、あれこれ申し上げずに最高級の部屋にご案内いたします」
 料金料を見せてくれと頼むと、アレクシスはどこかの読めない言葉で書かれた一枚の板を指し示した。
「料金表はイエザン書体で書かれています。洒落た雰囲気を出そうという女房の馬鹿げた考えでして。お題はお一人様金貨2枚、お食事は別に金貨1枚です」
 バーガンは胡散臭そうな目で、愛想笑いを振りまくアレクシスを眺めた。どうもこの主人は信用できない。翌朝、聞いてもいない高額を要求され、文句をいえば衛兵に突き出されるという寸法かもしれない。ここはひとつ、カマをかけてやろう。
「どういうつもりだ!料金表にはもっと高い金額が書いてあるじゃないか。それともお前はあれが読めないのか」
 バーガンの思惑通り、アレクシスは真っ青になり、視線をそらしながら、もごもごと言い訳をはじめた。
「あの料金表は女房が書いたもので、私も読めないのです。おはずかしいかぎりです。お一人様、金貨一枚で相部屋に泊まることもできますから」
「そっちが間違えたのだから、いっそ、タダにしたらどうだ」
 すかさずモリスが剣の柄を見せながらドスの聞いた声で凄むと、アレクシスは目を白黒させながらうなずく。冒険者の3人は互いに目を合わせてニヤリと笑った。
 
 案内された相部屋は、乞食や金のない巡礼者、飲んだくれた行商人といった最下層の人間であふれかえっていた。
 その中にパイプを吹かしているターシムの老水夫を見つけ、ジャブロの言ったとおりに、話しかけてみる。
「俺の話しを聞きたいのか。なら金貨をめぐんでくれ!俺にはこの1オンスの煙草しか財産がないんだ」
 せがむ老人に金貨を一掴み握らせてやると、老人は自分の半生記を長々と語り始めた。沈みかけた船から空とぶ木馬にのって飛び出したこと、遠く離れた島で美しい王女との結婚、人食い鬼の巣から脱出したなど、妄想ともつかぬ話しばかりが驚くべきスタミナで老人の口から一晩中、たっぷりと語られ続けた。バーガンとリー・チェンはうつらうつらとする中、夜明けの光が窓から差し込んできた。
 やれやれ、徹夜で老人の法螺話につき合ってしまったようだ。
 長い長い話しがやっと終わると、老人は最後まで律儀に話しにつきあっていたモリスの手をつかんで、木製のハンドルを押し付けた。
「これは話しに出てきた、空を飛ぶ木馬のハンドルだよ。あの時は、こいつのおかげで助かったが、いっそ溺れ死んだ方がよかった思うこともあるな。こいつをやるから、もしあの木馬を発見することがあったら、元通りにはめておいてくれ。きっとお前達の役にも立つだろうさ」
 捨てちまえよ、とバーガンが小声で言ったが、老人には敬意を示すのが礼儀なのさとモリス。老人に礼を言いながらそのハンドルを受け取った。

 アレクシスの運んできた朝食のまずい粥を食べ終えると、宿の前の泉で口をすすぐ。ふと見ると一軒の家の前に病人や貧乏人が並んでいるのが見えた。
「あれは医者のエミリタスの家です。この町で一番賢い男の家ですよ」
 アレクシスにそれだけを教えてもらうと、3人はぶらぶらとその家に近づいた。ブラッドソードの刀身のありかを知っているかもしれない人物に出会えたのだ。


続く


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 3巻は、どこで宿を決めるかによって、序盤の展開が大きくかわります。
 その中でも僧侶は医者のエミリタスと親友という設定なので、僧侶がいれば最初からエミリタスに会えるんですよね。これが一番で安全で楽な展開なのですけど、物語としては物足りないかも。


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