冒険記録日誌
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| 2005年10月13日(木) |
八百比丘尼の斎(麻野 一哉/チェンソフト) |
スーパーファミコンでサウンドノベルシリーズ第一弾として発売されていた、弟切草の続編をゲームブック化したものです。 入手してみるとパラグラフ数が500弱もあって、かなり本格的なゲームブックのようで嬉しい限りです。 さて、弟切草の続編といっても、原作は選択肢によっていろいろ設定の違う物語に発展しますので、その中の一部の話しを発展させたものになっているようです。半漁人が登場する話しが元ネタのようですが、私はそれほど弟切草をやりこんでいなかったので、本書を遊んでいてもピンときませんでした。
本書は原作と同じく、人里はなれた場所で車の事故にあって、真夜中に森をさ迷っていた主人公が、近くにあった古びた洋館をおとずれるという古典的なもの。 ただし、主人公は体育会系のたくましい27歳の男という設定で、原作の主人公たちとは別の人間です。 館の扉をノックすると謎の老婆に門前払いをされ、二階の窓からはこれまた謎の住民から、懐中電灯やら花瓶やらを投げ付けられて、屋敷にはいる前から散々な目にあいます。それでも主人公は、「屋敷のまわりは真っ暗で戻れない。玄関先では凍死してしまう」と言って果敢に屋敷の潜入を試みます。 もっとも、そのセリフの後すぐに懐中電灯を手に入れたにもかかわらず、引き返す選択肢はないみたい。 さらには「お堂の中で一晩すごす」という選択肢を選んでみると、無事に夜を明かせたのに、翌日の夜までまる一日寝過ごしてしまい、結局振り出しに戻るという、すさまじいボケッぷりを見せてくれます。 プロローグによると上司を殴って全治3ヵ月の重傷を負わせて会社を首になったらしいし、今回の不法進入で逮捕されそうな行動といい、主人公の性格は少々問題がありそうです。
やっとの思いで屋敷ホールに侵入すると、ひどく荒れ果てた状態になっていました。ここは原作でもかすかに覚えのある西洋の甲冑や巨大な水槽があって、ちょっと懐かしい気になります。 しかし、主人公はそんなことにお構いなく、腹が減ったと言って、一階の室内を物色し始めます(そんな選択肢しかありません)。鍵がかかっている部屋は、ウォォォォォ!とか言いながら体当たりで開けていくは、厨房でバナナを一房発見してムシャムシャ食べてしまうは、住民が出てこないのをいいことにゴリラ並みの行動ぶりです。
だいたい一階の全ての部屋を調べる終えると、ちょっとしたイベントが発生して、開かなかった扉が開き、今度は二階の探索が始まります。 このゲームブックは双方向システムで、ひととおり調べ終わると新たな場所へ移動する、そんなパターンを繰り返しながら進行しているようです。 それから鍵だの燭台だの毛布だののアイテムを入手することがありました。各アイテムには番号が振られているので、純粋な分岐小説と思っていましたが、ちゃんとメモをとらないと遊べないみたいです。
途中でどのアイテムを使えば進めるのかわからなかったり、ナンバー錠を開けるための3桁の数字を探すのに苦労しましたが、そのあたりさえ切り抜けると、後は詰まることなく割と順調にストーリーが進みました。 原作で主人公だった公平や奈美も登場するけど、なにか悲惨な状況になっています。 終盤近くなってから、ストーリー自体が大きく分岐する選択肢も出てきて、数種類のエンディングにつながっているようでした。 一応、私は一通りのエンディングを見ましたが、ハッピーエンドを含めて、どれも主人公が人肉を食べる展開の話しばかりで、読後感が悪すぎです。 一つくらい普通に元の生活に戻れるエンディングを用意してほしかった。
弟切草の世界が好きか、この手のオカルトに興味がないと、ちょっと駄目かもしれませんね。 ただ、それでもこの作品が売れてほしいとは思いました。 売れ行きが良ければ、第二弾として私の好きな「かまいたちの夜」もゲームブックになってくれるかもしれませんし。「かまいたちの夜」に限らず、我孫子武丸さんの小説を読んでみると、彼は絶対面白いゲームブックが作れそうな気がするのですけどねぇ。
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