冒険記録日誌
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| 2005年10月09日(日) |
フォボス内乱(宮原弥寿子/社会思想社) |
雑誌ウォーロックに掲載され、後に文庫本にも収録された短編ゲームブックです。アンドロイドなどが普通に存在するSF作品です。 この作品の面白さは、なんといっても主人公が戦闘用に作られた少女型アンドロイドだという設定でしょう。「いつか人間になりたい」なんて夢を見るような、中途半端なアンドロイドではありません。見た目は人間そっくりですが、あくまで機械は機械というスタンスで描かれているところがいい感じです。 主人公の目的は王位継承者の生命を王座を奪おうとする一味の者たちの手から守ること。彼女は非情な性格ではありませんが、必要とあらばいかなる犠牲も厭いません。
ストーリー的には、わずかパラグラフ255のゲームブックだけあって短い方なのですが、主人公が初めて起動して目覚めたとき、主人公を作り上げた博士が目の前で敵の集団に射殺されるという、いきなりな冒頭シーンで読者を引き込ませる部分がうまい。 次に面白いと感じたのは、主人公の特殊能力を扱うゲームシステムです。主人公には体からレーザーやミサイルを発射したり、3倍速で行動できるようになったり、赤外線で透視するなど様々な能力があるのですが、主人公は最初のうちは自分にそれらの能力が備わっていることを把握していません。 そのかわり危険が迫ったとき主人公は、腕をねじるか、イヤリングをひっぱるか、奥歯を噛みしめるか、などの衝動にかられるのです。実はそれらの行動はそれぞれ何かの能力のスイッチとして連動しているので、冒険中にいろいろ試していくことで主人公、つまり読者自身がそれを徐々に理解していく仕組みになっています。 自分の能力がほぼ把握できた頃にはゲームは終わるので、短編だからこそ成立するゲームシステムでしょうね。 あとネタバレになるので書きませんが、あるエンディングの内容が、もし主人公が普通の人間ならとてもハッピーエンドとは思えない展開で、これがこの作品をとても印象的に仕上げている部分です。選択肢によっては普通のハッピーエンドも一応用意されてあるけれど、最終パラグラフのエンディングをあちらにした事に作者のセンスを感じます。
<追伸> 最初の頃、私は序盤でどーしても抜けられないシーンがあって半ば攻略を諦めていたのですが、以前の日記でそのことを書いたら、掲示板の方で攻略法を教えてもらい無事クリアすることができました。にゃあ様、その節はありがとうございました!
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