冒険記録日誌
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| 2005年06月20日(月) |
ネバーランドのリンゴ(林友彦/創元推理文庫) |
ゲームブックファンにはもはや説明不要、鈴木直人作品に並ぶ和製ゲームブックの代表的作品の1つだと思います。 妖精の住む国、ネバーランドを舞台に猫妖精のティルトが活躍する冒険談なのですが、私は店頭で髪を梳くエルフ(エスメレー)の表紙イラストが載った本書を見てすぐに本書を手にとって買った記憶があります。 まだ私が「地獄の館」と「謎の村雨城」の2,3冊くらいしかゲームブックを持っていない頃でしたから、本書の分厚さと1000というパラグラフ数には圧倒させられました。 主人公が成長をする要素があったり、2度の復活が認められているあたりなど、TVゲームを意識されたといわれる作品ですが、おそらくそれだけでは人気はでなかったでしょう。私のように、絵本のような言い回しの文章や、独特の世界観に魅了された方も多いと思います。 蚊饅頭や土竜、ごったがえすキャメット城。悪賢い魔女に、性格の悪いノーム、カワウソの船頭、呪われた城など面白い登場人物やエピソードがふんだんに盛り込まれ、それらの地域を何度も自由に行き来できることが、どっぷりとその世界に浸れる要素として感じられたのです。急いで先に進む必要がないのも双方向システムならではの魅力ですね。
本書の冒険は2部構成です。第一部はさらわれたエスメレーを救出して、バンパーの城へもぐりこむまでのアドベンチャー。先程も書いたとおりの内容で、もちろん危険もいっぱいですが、歩いているだけでも楽しいネバーランドを探索しつつ、必要なアイテムや情報を収集していきます。 金貨を入手する機会が少ないのが残念。金貨がなくてクリア不能になるわけではないのですが、買い物は慎重にしないと後で後悔すること請け合いですね。 戦闘バランスは序盤こそは厳しいですが、レベルアップをしたり、仲間を得たり、強力な武具を入手しているうちに、ほぼ無敵になっていきます。いくつもの魔法を習得していくのもまた楽しいです。 第ニ部はバンパーの本拠地である蜃気楼城をさ迷う内容です。蜃気楼城はひたすらシンプルな迷路が延々と続く、悪夢のような構造なので、残念ながらこちらはただひたすらに疲れます。一応、第一部で迷わずに目的地へたどり着く為のヒントを知ることができるのですが、うっかり本を落としたり、パラグラフ番号を失念すると、泣きをみること間違いナシです。このころになるとティルトも強くなっていて、戦闘も楽勝だし緊張感が続きません。パラグラフ数にこだわらなくてもいいから、普通のアドベンチャーにしてほしかったのが不満といえば不満です。
ちなみに私の初クリアは、まだゲーム序盤の状態から意外な展開でいきなり蜃気楼城に侵入してしまい、迷路を延々とさまよった末に、バンパーをあっさり倒してしまいました。まだエスメレーを救出すらしていなかったのに。 こうゆう隠しルートもTVゲームっぽいのですが、そんな秘密が偶然に簡単に発見できてしまうのは難点ですね。真っ当にクリアしたあとのお楽しみくらいにして欲しかった。私が本当の意味でクリアしたのは、第二作目の「ニフルハイムのユリ」をクリアしたあとでした。 とはいえ、この作品が創土社さんあたりで復刊してほしい随一の作品なのには変わりありません。私の中では小説界のエンデの「果てしない物語」に通じるくらいに、この世界に惹き込まれるものを感じるのでした。
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