冒険記録日誌
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| 2005年06月01日(水) |
青函トンネル大迷宮(雅孝司/祥伝社) |
本書の発売当時ではまだ工事中だった、青森と北海道を結ぶ青函トンネルを舞台にしたゲームブックです。 発売当時に本屋で本書を見かけて、「青函トンネル大迷宮ぅ?なんだそれ。トンネルって迷宮じゃないやん」と買わなかった記録がありますね。
当たり前ですが舞台は現実の世界となっています。主人公は雑誌編集部に勤めるしがないバイト青年で、ある日のこと殺人事件を目撃してしまうのです。 犯人は主人公の気配を感じてすぐに逃げましたが、被害者の男を介抱しようとすると、死に際にあるメモを手渡してこときれるという、まあ物語としてはありがちなスタートです。 物語の展開としては大きく3部に分かれていて、託されたメモの謎を解く少しミステリーっぽい雰囲気のプロローグ部分。メインの青函トンネルの中を探索する双方向システムの迷路。青函トンネルを脱出してからのスパイ映画のような逃亡劇という感じです。 青函トンネルの中だけ双方向システムで、そんな複雑ではないのですが、メンテナンス用の別通路や作業員用の枝道などがトンネル内にはあって、本当にちょっとした迷路になっていたのは驚きです。そういえば、実際に開通前のトンネルを見学した人が「迷路みたいでビックリした」とか書いていたのをネットで見たことあるな。大迷宮は流石にいいすぎだと思うけど。 私の最初のプレイではゲームのメインとなるはずの青函トンネル内で、何のイベントも経験しないうちに、あっさりトンネルを脱出してしまいました。するといきなり警備隊に襲われそうになったところを、謎めいた女に救助されてあれこれ説明され、事情が良く飲みこめないまま終盤の怒涛の展開に進んでしまって、えっ?えっ?と思っている間に準ベストエンディングまで到達してしまいました。 二度目のプレイでは、じっくり青函トンネル内を探索してみたのですが、CIAやKGBの工作員までトンネル内に潜んで登場してくるし、本当にここは日本の工事現場なのだろうかっていう感じです。トンエル内で出会うと問答無用でいきなり銃を発砲してくる作業員もなんだか怪しいのですが、とにかく作業員につかまるとゲームオーバーです。作者が一度だけ時間を戻してくれる救済処置がありますが、欲を言えば牢を脱出するとか、もっともらしい演出をつけて欲しかったな。 他にネタバレになるので内容は書きませんが、なんというかストーリーというか設定に無理がありすぎるような。いくら闇の政治力が働いていたとしても、開通前で世間に注目されている青函トンネルであんな秘密を隠蔽できるとは思えないけどなぁ。
あとこのゲームのルールは所持品の管理くらいで簡単です。作者も後書きで書いているように電車内でも楽しめるでしょう。他に本書の特徴としてサイコロを使わないかわりに、独特の判定方法を採用しています。例えば、
君は男を殴り倒そうとした。成功の確率は5分の2。 ──→92へ ──→205へ ──→34へ ──→150へ ──→138へ
という感じで、何も書いていない選択肢でパラグラフが分岐しているのです。この例だと、2つと選択肢の先がすぐに合流して男を殴り倒すのに成功したパラグラフに移動するのです。もちろん残り3つもすぐに合流して、失敗した展開のパラグラフに進みます。 わかりやすいシステムですが、おかげでパラグラフ数がすんごく水増しされています。本書の総パラグラフ数は297ですが、実質的には200くらいの内容でしょう。 トンデモ系の設定が気にならなければ、あとはきわめて普通の作品。難易度は低く、割と簡単に読み終わると思います。読んでみるかどうかは、お好みでどうぞ。
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