冒険記録日誌
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2005年02月13日(日) 甦る妖術使い(I・リビングストン/社会思想社)

(少しネタバレしているので、遊ぶ予定の人は読まないほうがいいかもしれません)

 究極の理不尽ゲームブック。FFシリーズ第26作目であります。
 何が理不尽って、クリアできないからっす。
 死んで覚えろ的にノーヒントでバットエンド確定の選択肢。技術点7・8は冒険者にあらずってスタンスは、初期を除くリビングストン作品にはよくある話しですが、こいつはさらにひでえです。
 難しさだけならジャクソン作品の“地獄の館”や“モンスター誕生”もありえない難易度なのですがね。この作品はタイトルにも登場する甦った妖術使いさんが凶悪すぎるんです。「ラザック・技術点12・体力点20・特殊能力として2回連続で妖術使いの攻撃が成功したら主人公即死」ってアホかい。特別な対処方法もないし、技術点12・体力点24・運点12の冒険者でも勝てないじゃんよ。こういうのは難易度が高いってより、ゲーム性が破綻しているっていうんだよなぁ。ゲームバランスもへったくれもない。
 ゲームブックブーム当時は、この作品を読んで後期のFFシリーズは難しすぎるなぁと、続いて“奈落の帝王”を読んで変な設定(謎かけ盗賊の存在とか)が多くてもうついていけないや、とFFシリーズを読まなくなったんだよな。うん。

 まあ、そう厳しいことを思ってしまう作品ですが、フォローしておくと世界観はいいです。
 ストーリーこそ、封印が解かれ世界を滅ぼさんとする妖術使いラザックを倒すべし、というオーソドックスな内容ですが、善の魔術師ヤズトロモもしっかり登場するし、途中で出会って冒険を共にするエルフとドワーフの仲間も明るくて会話シーンが楽しくていい。FFシリーズには、ドワーフのキャラと主人公の同行者キャラは、大概悲惨な目にあうというジンクスがありますが、見事にこれを破っていますね。
 それに、かつてラザックを倒した伝説の剣を、骸骨となって湖畔を彷徨っている昔の英雄が今も握っているという設定は、映画のように格好いいです。剣を受け取る場面なんか特にね。
 先日久しぶりに再プレイをしてみたのですが、技術点10の主人公でかなり終盤まで進むことができました。ラザックとの戦闘さえ考えなければ、この作品も「死の罠の地下迷宮」と同じくらいの難しさでしょうか。
 ティラノサウルスみたいな「ガーガンティス・技術点12・体力点24」という無茶な敵が登場しますが、これはアイテムによっては戦闘を避けられます。クリアできる選択の幅も狭いのですが、基本的に一本道のストーリーなので、ジャクソン作品のようにどこの選択肢が間違ったかわからない!ということもないので、何度か挑戦していれば、必ず最善の道がわかるようになります。
 リビングストンらしく、世界の広がりを感じさせる箇所も随所に見受けられます。“運命の森”で登場したドワーフの町、ストーンブリッジが登場するのもそうですが、パラグラフ167番で登場する盲目の老人との会話ではポートブラックサンドの話題が出てきます。彼はアズール卿の怒りを買って目をえぐられてしまったものの、魔法使いニコデマスの計らいで放免されたそうです。
 以前に“マーリンの呼び声”の管理人のセプタングエースさんからメールで教えていただいたことですが、盲目の老人の「古い友人の、治癒師のところへ赴くのです」というセリフは、“雪の魔女の洞窟”に登場した魔法使い「癒し手」を指しているそうで、そうなると本書は3人の善の魔法使いが全て話題にあがった貴重な作品といえますね。
 リビングストン作品ってゲーム性はダメダメですが、こうゆう小説的な魅力を考えるとなにか憎めないんですよね。


山口プリン |HomePage

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