冒険記録日誌
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| 2005年02月04日(金) |
恐怖の幻影(ウォーターフィールド/社会思想社) |
久しぶりにFFシリーズの感想です。 ウォーターフィールドの書いた前ニ作品(電脳破壊作戦と仮面の破壊者)は、登場人物や世界観が魅力的で気に入っていたので、本書はぜひとも読みたいと思っていた一冊です。そして内容は期待を裏切らない出来でした。 主人公は森エルフ。魔王子イシュトラに犯されつつある森を救うため、枯死した森の中心にある穴へ向かうという冒険なのですが、まず最初のパラグラフは、予知夢の中から始まります。森の分かれ道に立った主人公が、どちらの道へに向かうか迷うわけですが、分かれ道の中心に立つ女神の像の動きや、それぞれの道の先に漂う生と死の暗示が入念に書き込まれて描写されており、どちらの道を選ぼうかと、導入から読者を冒険の世界へと惹きつけるのです。 夢から覚めた主人公は、イシュトラが潜む穴を捜して森の中を彷徨うことになるわけですが、人間との遭遇シーンやピクシー達に逆さ釣りにされるシーンなどが特にいいですなー。展開次第では、魔術師ヤズトロモや、高層ビルの立ち並ぶ現代社会(サイボーグを倒せ!のタイタンシティ?)を垣間見ることができるシーンまであってニヤリ。遊び心も忘れていません。 夢と言う要素が巧みに生かされているのは「穴」に入った冒険の後半部分です。一見、「火吹山の魔法使い」のような普通のダンジョン探索なのですが、このダンションからはパラレルワールド的に夢の世界が存在していて、読者はこの2つの世界を任意で行き来できるのです。もっと噛み砕いていうと、大まかな構造こそ一緒だし同じ道なのですが、雰囲気も敵やトラップも違う現実の世界のダンジョンと夢の世界のダンジョンの二つが存在しています。そして、そのどちらのルートを通るか、いつもう一つのルートに切り替わるかは読者がある程度自由に動けるということです。ウォーターフィールドの巧みな筆力のおかげもあって、なんとも不思議ながら、本書でしか体験できない面白さが味わえます。 最後にゲームバランスの方ですが、後期FFシリーズにしては無茶苦茶厳しいわけではありません。ただ自由度は高いのですが、「火吹山の魔法使い」の鍵集めと同じく、クリアに必要なアイテムを収集するルートはかなり限られています。(穴に入る前の入手ルートはすぐわかったのですが、その後がなぁ。氷を入手するときなんてサイコロ運も必要そうだし・・・) 能力値についていえば高い技術点もそれなりに必要(特に闇エルフとの戦闘シーン)ですが、それ以上に魔力点の初期値が低い場合はアイテムの入手が難しい箇所がありクリアは困難になります。逆に魔力点が高ければアイテムに頼らずに、強引に戦闘でイシュトラを倒すことも可能になっていて、私の場合は深く考えずともこの方法でクリアできてしまいました。 英語力のない私にとって、日本語で読めるウォーターフィールドの作品がこれで最後と言うのはとても寂しいです。いつの日か後期FFシリーズの何作かが翻訳されるという話しがあれば、真っ先に彼の作品を推薦したいと思っています。もっとも他にどんな作品を書いているのかは知らないのですけどね。(^^;
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