冒険記録日誌
DiaryINDEX|past|will
| 2004年08月30日(月) |
桃太郎電光石火─00(ゼロゼロ)モモ危機一髪─(橋詰啓・大出光貴/双葉文庫) |
(プロローグから要約) 盛り上がっていた港のヨーコヨコハマヨコスカ博覧会も閉幕したある日のこと。東京湾にドンブラコッドンブラコッと、直径500メートルはある巨大な桃が流れてきました。東京の住民達は大パニック!桃から出ている『笑撃波』なる奇怪な音波が原因で東京湾周辺住民が突然駄洒落を言い出しては笑いだすという大変な事態が発生したのです。しかも、桃には電光掲示板がついていて、謎のカウントダウンを始めていたのでした。果たしてカウントが0になれば何が起こるのか! 科学者たちはこの桃を「モモリス」と名づけ、その対処について研究に研究を重ねた。その結果、桃のことなら桃から生まれた桃太郎にまかせるべきだという結論に達したのだ。(なんかイージー) 桃太郎とは日本秘密謀報局(略してNHK…)に所属するメンバーであり、またの名をコードネーム「00モモ」と呼ぶのだった。こうして東京の、いや日本の、いやいやもしかすると世界の命運をかけるかもしれない桃太郎の活躍は始まった。
「桃太郎伝説」や「桃太郎電鉄」などで双葉ゲームブックファンならお馴染みの桃太郎シリーズ第3弾。オーソドックスな昔話風アドベンチャーや、企業経営ものと続いたあとは、今度はハードボイルド(?)です。他の桃太郎シリーズやプロローグを読むだけで想像がつくと思うのですが、全編がしょうもないギャグや駄洒落に覆い尽くされている作品。しかし1・2作目ならともかく、本書にも原作となるTVゲームが存在するのかしらん。 それにしてもですね。ある意味では究極のゲームブックですよ、この作品は。 ストーリーやゲームシステムも適当なのだけど(ただ、失礼ながら意外にゲームバランスは良い)、パラグラフ一つ一つ、戦闘シーンも会話のシーンも買い物のシーンも、どの選択肢の先も、バッドエンドにいたるまで怒涛の如くギャグを盛り込んでいるのには、平伏すらしたくなる。それは変に内輪受けしたギャグではないし、ましてやウェットのきいたユーモアなんてこじゃれたものでもない。あるのは「ふとんが吹っ飛んだ」「電話にデンワ」レベルのベタベタなナンセンスギャグのみ。力の抜けたような本文イラストもこれにピッタリ合っている。 登場人物も怪しい奴ばかり。無茶苦茶に強いが、持病の痛風が起こるとカラータイマーが鳴り出すスパイの婆さん。せこくて信用できないNHK長官のミスッタM。ラーメン屋を経営しながら世界征服を狙う組織、閻魔一族。桃太郎をスイカと天ぷらを掛け合わせた改造人間にしてしまおうとするショッカーもどき(食い合わせが悪いので改造されると恐るべきゲームオーバーを迎える)。義賊の血により情報を半分しか盗まないスパイ、コードネーム00銀二(意味ねーだろ)。天然自信過剰の謎のスパイ娘、コードネーム00スモモちゃん(なんでも00つければいーんかい!)。などなど。 これを、しょーもないと一蹴するのは簡単だけど、数百ものお笑いネタを一冊に盛り込んでゲームブックを成立させることなど普通にできるだろうか。否。これも作者にセンスが無ければ、たちまち破綻して単なる駄作と化してしまうのだ。 B級路線もここまで極めれば、芸術であるとまで思ってしまう。 笑いのセンスさえ合えば、どんなにくだらなくても最後まで飽きずに読みきれてしまうことは間違いないので、ギャグゲームブックと割り切るなら強くお勧めできる作品だと思う。ああ、ゲーム中で売っていた「紐で縛って形を整えた、金箔入りの緊縛ヨウカン」を食べてみたいです・・・。
(追記) 2004年08月04日の冒険記録日誌に書いている「ソウル・アドベンチャー スプリンターを守れ」もナンセンスギャグゲームブックです。 あちらは割と辛口に感想を書きましたが、「ソウル…」は火浦功ティストのギャグ、対する「桃太郎電光石火」は横田順彌のようなギャグといったところなので、どちらが面白いと思うかは各自のお好みでどうぞ。
|