冒険記録日誌
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| 2004年07月28日(水) |
ルパン三世18 失われた絆(竹田明/双葉文庫) |
ロサンゼルスの名家で何不自由なく暮らしていた少女ナンシー。ある日舞い込んだ一通の手紙に導かれ、生まれた時に離ればなれに育てられたという双子の姉妹、キャシーに会うため、N.Y.への旅立ちを決意する。だがそれは、自らの運命を左右する巨大な陰謀のただ中への、危険な旅立ちであった。ここはN.Y.。不二子にノセられて、イヤがる次元と五右衛門を連れてきたルパン。ハーレムに散歩に出かけたルパンは、たまたまそこでキャシーとナンシーが誘拐されようとしている現場に出くわした…。(本書カバーより)
ルパンらしさ:★★★★★
序盤から怪我でリタイヤしてしまう次元に代わり、五右衛門が準主役としてルパンの相棒役をつとめるという珍しい設定。 それからハーレーダビッドソンで登場する不二子を見ることができるのが、らしくて良い。ゲームの最中にライダー姿の不二子が登場するのは、ゲームブックシリーズではこの作品だけじゃないかな。 しかし、冒険の主な舞台となる怪しげな研究施設は、遺伝操作で生まれた化け物じみた実験動物や、致命的な防犯用の罠など、怪しげなものがひしめき合っている。気分はもうルパンというより、バイオハザード(byカプコン)だ。 別に全体の雰囲気は暗くはないのだが、ゴリラの化け物に悲鳴をあげるヒロインの首がねじ切られるバッドエンディングとか、大量の胎児の浮いたプールとか、グロイシーンもいくつかあって、うげっと思った。
ゲームの完成度:★★★★★★★★
ルパンゲームブックシリーズでは、珍しくサイコロを使用する作品となっていてランダム性がある。 しかし、この作品のゲーム性が優れているのはそのせいではない。 物語の途中からルパンと五右衛門は別行動をとるのだが、その間はルパン視点と五右衛門視点のパートを交互にプレイして進行していくのだ。これにより、例えばルパンのパートで警備員の注意をひきつける選択誌を選んだ場合、五右衛門パートで今まで邪魔だった警備員が去ってしまい、五右衛門が通路に侵入できるようになるなどの凝った演出ができている。 二人用ゲームブック「王子の対決」(2002年10月21日の日記で紹介済)に多少システムが似ているが、あちらよりさらにザッピングシステムを意識した作りとなっている。ザッピングシステムとは、片方のパートの行動がもう片方に影響するという構造のことで、他のゲームブックでは味わえない楽しさがある。
ヒロインの魅力:★★★★★★★(メルダック姉妹)
ナンシーとキャシーという、幼い頃に生き別れになった双子の姉妹。 片方はお嬢様として、もう一人はスラム街育ちと、まったく違う環境で生活してきたという設定にもかかわらず、性格はそんなに大差ないようだ。中盤からナンシーはルパンと、キャシーは五右衛門と一緒に行動するようになる。 2人の間には不完全ながらも、テレパシー能力があるらしい。
お気に入り度:★★★★★★★
面白い特徴のある作品なのだけど不満点も多い。特にゲーム性重視のためか、強引なストーリー展開とやや説明調な文章が気になる。序盤のみ登場したフィル君は、エンディングで名前がウィルに変わっているし。まあ、これは間違いかな。 他にもせっかくのザッピングシステムなのにほぼ一本道の展開なので、繰り返しプレイが面白くないのも問題。そのくせゲームバランスは難しい方なので、真面目にやるならやり直しプレイは必至なのだ。 パート交替のたびに記入するタイムチェックの欄も煩雑なだけで不必要だと思う。そもそもパート交替のタイミングが頻繁過ぎ。わずか数パラグラフ毎に発生するので、落ち着かないことこの上ない。 と、こんな風にいろいろ言いたい文句もあるわけだけど、何の特徴もないゲームブックよりは、こういった意欲的な作品の方が楽しいので、結構お気に入りです。
それから作者の後書きによると本当は、黒人が白人を支配をする架空の国を舞台にした作品を書きたかったそう。しかし当時はあの“ちびくろサンボ”を黒人差別と非難する人々が、活発に発言していた時期だったのでボツにしたそうだ。主人公はなんと不二子で考えていたそうで、これはプレイしてみたかったかも。 作者はその人達にかなり怒っているようでしたので、喧嘩覚悟で書いてみればよかったのに。ちょっと残念。
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