冒険記録日誌
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| 2003年10月31日(金) |
奥様は名探偵 その3 |
(ネタバレ注意。“マナ亭奇談”をプレイ予定の方は読まないで下さい)
「事件の概要はわかったわ」 一通りの捜査が終わると、奥様は得意そうにそう言った。 捜査開始からまだ1時間程しか経過していないというのに、すごい自信だ。 奥様は嫣然と笑いながら、片手でワイングラスのように萩焼きのカップを回す。 「そうか・・・それでこのホテルは一体なんなんだ。失踪した北島氏は?」 私が急須でカップに緑茶をそそぎながら尋ねた。 「ふふ。あわてないで。まず、このホテルの支配人。正体はダイエット研究で有名だった鷹橋学博士ね。彼は過去に大失言が災いして干されているから、世間を恨んでいた可能性は十分考えられる」 奥様はお茶を飲みながら続ける。 「部屋の秘密は魚へんをつければどの部屋も魚の名前になること。これは“タラお預かり”のメッセージと、北島氏の部屋名の“雪”でわかったの。捜査中も魚の話題が多かったし簡単だったわ。そしてこのホテルの目的───」 ここまで言うと奥様の目が光った。私は思わずつばを飲み込んだ。 「それはお客さんを魚料理にして食べちゃうこと。ホテルの秘密主義。地元から魚を仕入れないのに、現地調達しているという従業員の言葉から間違いないわ」 「な、な、な、なんだそれは・・・。それでは北島氏は」 「かわいそうに、今ごろは冷凍肉ね」 「なんてことだ!おのれ、宮沢氏。いや、今どこにいるんだ!鷹橋博士め」 正義感に燃える私は、宮沢氏のいる部屋を探してマナ亭を走り回った。 「ここか!キエェェェェ!」 小学生の頃に習った少林寺拳法にものをいわせ、空手チョップで部屋に飛び込む。そこには4人の人間がいた。 宮沢氏と、北島夫人、シャーロックゲームズ。そして北島氏。
は?
私は、抱き合って再会を喜んでいる北島夫妻を呆然とみつめた。いったいどうなっているんだ? ゲームズが私に説明してくれた。マナ亭では秘密主義を匂わせ、お客に「このホテルは、お客を肥らせてから食べてしまうのではないか」という恐怖心を植え付け、それで必死にダイエットしてもらうという営業をしていたのだったのだ。それでも自発的に痩せようとしない北島氏のようなお客は、一度襲って恐怖を味あわせてから正体を教え、ホテルの従業員として働いてもらっていたということだった。 しかし硬直した私の耳には、後ろでドアを蹴り開けてマナ亭を出て行った奥様の、「そんなのわかるわけないじゃん!」というかすかな声しか聞こえていなかった。
完
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