冒険記録日誌
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2003年10月27日(月) ドラキュラ城の血闘(J・H・ブレナン/二見書房)

私のマイベストゲームブック、ベスト5に入る作品。
ヘルシング教授に誘われて同志五人、ドラキュラ退治のために館を探索するお話なのですが、ふざけているのかそれともふざけているのか、とんでもない展開が次々と登場します。
部屋を一つ開けるたび、廊下を一つ進むたびに、読者はギャグの攻撃に耐えねばならないこと必死です。
どんなギャグかって?
まだ読んでいない人の楽しみを削いではいけませんので一例だけあげますと、ある薄暗い小部屋に美しい壷が置いてあります。ここは正体を確かめるため“壷の中に手をつっこんで舐めてみる”を選択しましょう。すると、

───最近までヨーロッパ社会には、いわゆる便器が存在しなかった。もちろん、それまではヨーロッパ人が用を足さなかったというのではない。広大な宮殿の柱や後ろの美しい庭園の木陰には、かならずこのような壷が用意され、用を足す器として隠し置かれていたのだ──。と、いうようなことを、きみは、中身を舐めてから、わりに冷静に思い出していた。
ひとあじ遅かった・・・・・・。

というような感じ。他にも頭がどうかなりそうなほど、ぶっとんだ内容が主人公を待っています。
さらにきわめつけに本書を特徴付けているのは、この作品が「人間編」と「ドラキュラ編」という2つのゲームブックで構成されている点です。
最初、主人公は「人間編」でドラキュラ退治をするのですが、途中でうっかり吸血鬼に噛まれてしまうと───なんと、吸血鬼になって今までと逆に仲間だった人間達と戦う「ドラキュラ編」に突入するのです。
すると、仲間がニンニクをぶら下げたホールには近寄れなくなり、毒草の咲き乱れる庭は素晴らしい楽園に見え、人間のときは気配しか感じなかった幽霊とお話ができるようになる、と180度世界観が変わってしまいます。館の探索中は同じ部屋でも、「人間編」との対比に思わずニヤニヤ。そして、もし人間達にニンニクや十字架を突きつけられて退治されてしまったら───「人間編」に逆戻り。
これが、「人間編」と「ドラキュラ編」を行ったり来たりしないと、クリアできない部分もあるので、見かけによらずゲーム性が高い要素なのです。
エンディングは人間としてドラキュラ伯爵を退治するか、吸血鬼としてヘルシング教授を倒すかの2つ。どっちもかわいそうな結末が待っています(笑)

現在ではなかなか入手困難な本書ですが、いずれ創土社から復刊してもらえる可能性もあります。持っていない人も、あきらめずに読める日を期待しましょう。期待するだけの価値はある一冊です。


山口プリン |HomePage

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