冒険記録日誌
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2003年06月22日(日) 女魔法使いフィルス 聖なる樹を求めて(武田邦人/朝日ソノラマ)

チャーミングな女の子、フィルスが主人公のゲームブックです。
作者の武田邦人さんのゲームブックには、「騎士ローラン 妖魔の森の大冒険」という前作がありますが、どうやら共通の世界観をもっているようです。フィルスはそちらでも脇役として登場しています。
プロローグは、世間から離れた平和な村で育ったフィルスは、魔法の師匠ミスラルの助言にしたがって、修行のためお城へ向かいます。というもの。
お城でしばらく魔法の修行をしたあと、やんちゃなお姫様を助けるため冒険に旅立つというストーリーの流れになっています。
育ちの良さが伝わるフィルスのキャラクターに加え、前作に引き続く「〜です」「〜ます」調の文章の影響もあってか、牧歌的な雰囲気は非常に魅力的。さらに前作は純粋な分岐小説だったのですが、今回は体力と魔力のポイントが設定されていて多少のゲーム性が加わっています。
フィルスは精神魔法の使い手という設定のためか、使う魔法は地味目です。内容は“明かり”“精神離脱”“危機予感”など。めぼしい攻撃魔法も“衝撃波”くらいです。しかし盗賊のアジトに侵入するときに、明かりの魔法を地面にかけて門番の注意をそらすなど、たまに賢い使い方をしています。実力の不足分は機転でカバーするという感じでなかなか良いシーンです。
ただし。物語の後半は不満点が多い。
基本的にこのゲームブックは一方向システムですが、後半で冒険中に荒れ地を抜けるシーンだけ双方向システムに切り替わるのです。ここがストーリーの流れを断ち切っているうえ、ゲームの難易度をあげるだけで不必要な部分に感じました。後書きで作者がゲーム性をあげるために、双方向システムを取り入れたようなことを書いてますが、これは裏目にでていたと思います。
さらに後書きでは、締め切りが迫っていてしかたなく終盤のエピソードを削ったとも書いていますが、本当に最後あたりはバタバタっと駆け足で終わっていました。物足りないです。
荒れ地のシーンの執筆に時間をかけるくらいなら、ストーリーの完結を優先してほしかったな。なんだかもったいないと思える作品でした。


山口プリン |HomePage

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