冒険記録日誌
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| 2003年02月24日(月) |
死神くんは恋のジャマ(樹かりん/双葉文庫) |
16歳の女子高生が主人公のゲームブック。しかも双葉文庫とくれば、もうおわかりですね。 甘酸っぱい少女小説を見事にゲームブックで表現した名シリーズ、ペパーミントゲームブックです。 そして「死神くんは恋のジャマ」は、ペパーミントシリーズの最も本道をついた作品でしょう。 なぜかというと、主人公は好きな男の子を助けるべく、彼を襲う死神と戦うお話しだからなのです。 この“ちょっと気になるアイツ”的な男の子は、どのペパーミントゲームブックにも必ず登場する要素なのですが、どれも冒険の目的は悪霊と戦うとか誘拐犯を探すことであって、彼との恋愛要素は決してメインストーリーではありませんでした。冒険中は一緒に行動しているのですが、主人公の女の子は時々彼を見てちょっとドキドキするのが関の山で、もどかしいったらありません。 しかーーし!今回は違います。 己の命をかけて死神の手から彼を守ろうというのです。 一介の女子高生が危険を省みずこんな冒険をするなんて、まさに愛のなせる技ではないですか。なんと泣ける話しでしょう。 死神君の容姿が、ジャニーズ系の美少年だという設定も、この際許してあげようではありませんか。 (もっともこの死神君もなかなか、いい味を出したキャラクターです)
ゲームシステムの方は簡単で、行動チェックの為にアルファベットを記入する欄と、ハートポイントという数値を管理するだけです。 ハートポイントは恋愛ボルテージ指数とでもいうべきもので、彼に嫌われるとか好感触を得る事で数値が上下します。 この数値が高いと彼からのリアクションが良くなるだけでなく、主人公のとっさの判断力や行動力まで優れてくるので、いろいろと有利です。恋する乙女は強いという事ですね。 反面、一旦ハートポイントが下がると次々に不利な展開が待ち受けて、ますます数値が下がり易くなります。序盤でも油断せずに気をつかいたいところです。 さて、実際のゲーム中では彼はかなり悲惨な役回りとなっています。 道を歩けばトラックに轢かれそうになるわ、野球のボールが飛んでくるわというのは当たり前。学校の教室では蛍光燈が落ち、体育の事業では飛び箱が壊れて怪我をします。お店に入れば熱湯をかけられ、シャンデリアは落ち、遊園地ではジェットコースターが故障、動物園では馬に蹴られて死んでしまうことすらあるのです。 そのたびに彼を突き飛ばしたり、大声をあげたりと主人公は大忙し。 一歩間違うとコントとしか思えない展開なのですが、そこは主人公の一途で真剣な思いによって、そうならないようフォローされています。 ただ、主人公の苦労にもかかわらず、彼は死神なんて信じてくれません。あんまりしつこくすると、彼に嫌われてハートポイントが下がってしまいますので、このあたりの選択肢は悩みどころなのです。 終盤のクライマックスはドラマにありがちな展開と思うのですが、ここは作者の意図どおりに素直に泣いて読みましょう。 ゲームブックに限らず本の面白さは、いかに読者がその世界に浸れるかにかかっていると思いますから。
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