池ポエム
ハンス



 近未来

忘れた頃に未来は、見えるもんね。
……それは嘘。


「大丈夫、ちゃんと握ってるから」
先行くあの子はそう言った。いつも一人で先に駆けていってしまう、奔放なその姿からは想像もつかない、優しい声で。
「私が●●のこと、置いてきぼりにしたことないだろ?」
どこまで遠くに行ってしまっても、ついて来ていないことに気づいたら少し戻って待っててくれる。迎えに来てはくれないけれど、追いつくのを待っててくれる。同じことはできないけれど、できそうなところまで考えて提案してくれる。いつか追いつくのを待ってる。
いつか、同じ世界を見られる日を待ってる。
「そうか」
あの時、あの時、すべての行動が、あの人の意志を表していた。
「手を離したりしないって」
あまりに強く握りすぎていたのか、苦笑い。
でも気づいていた。強く握っていたのは、自分だけじゃないと。何が欲しかったんですか?そう尋ねても、きっと無自覚なんだろう。一人でどこまでも行けるのに、ちっぽけな手を強く握っていた貴方。一人で世界の果て、貴方しか見られない風景にたどり着いてもよかったのに。
望むことは、もっと難しいこと。
「怖くないよ」
だから二人で行こう。
暗にそう言っていたのだとしたら。

「手を離したりしませんよ」
暗がりで、赤くなるほど握られた手。強張る指をそっと包む。我に返ったのか、急に目にいつもの光が戻る。
「痛かったでしょう?ごめんなさい」
「……貴方を一人にはしません」
その言葉に、顔を上げた。泣かないのだ、この人は。あの子が泣かなかったように、世界の果てまで一人行くために、涙は乾いてしまった。
「遠慮もしないでください」
貴方が走り出す後を、離れずついて行く。


遠い昔は、未来によく似てる。

2009年03月07日(土)
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