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■ 愛する二人別れる二人
手始めに、目覚まし時計が宙を飛んだ。 ベッドの二階にいた奴はすばやく避ける。無残にも目覚まし時計は壁に当たってバラバラになった。 「甘いわね。こんなのいつも避けてるあたしからすれば……」 「いつも?なんで?」 私のもっともな質問には答えず、奴は二階から一気に飛び降りてカンフーっぽい構えをする。これは、やる気と見なしていいらしい。私も傍らにあったクラフト紙の中芯を手に取る。 「ちょっ、こんなとこで長物はヤバいって」 私の目の前にいるエセジャッキーは露骨にうろたえた。 「個人的な決着、着けるんでしょ」 「それはまぁ、あたしはどっちでもいいけど。あんたに棒キレ持たせたらこの部屋崩壊するって」 「いつもの使わないだけマシよ」 アレは規則で、日常使用することはできない。私もこんなくだらない私闘で星を減らしたくはない。だからまだ譲歩したつもりだ。 ことの発端は、常日頃から言動が変態くさいルームメイトが話題を蒸し返したことによる。数日前の仕合いから十日経って、ルームメイトは元気に戻って来た。普段はうるさい奴だけど、いないならいないでどこか物足りない。その点では、ピンクの髪をしたあのチビにも似ていた。 アレはちょっとしたノリで言ったのだけど、私たちには残された問題が一つあった。大問題を前にそんなことは忘却の彼方だったが、こうして日常が戻ってきて、急に思い出したのだ。奴が。 「個人的な決着、着けないの?」 何が嬉しいのか、ニヤニヤしながら奴が言う。片手には何やら二人の女が手を繋ぐ表紙の雑誌。先日部屋を片付けた際に、刃友の部屋に置いてあった分がこっちに回ってきて部屋が狭くなった気がする。私のゲーム関連で結構収納は埋まってるというのに、これ以上変なものを増やさないでほしい。 「なんならここでやってもいいんだよ。特にベッドとか」 「よぉし……一応遺言を聞こう」 いつもの軽口なのはよくわかっていた。が、つい背中から火でも噴いていたようで、相手の顔は一瞬で蒼白になった。 「あ、じゃあさ」 奴は雑誌を閉じて、指をくるっと回した。 「あたしが勝ったら綾那ちょーだい」 そして冒頭に戻る。 (つづく)
2005年08月02日(火)
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