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■ 真夏の夜の悪夢3
一日の長いドライブの後の水はうまい。 「うおー、きれいだなー」 天気は晴天。雲ひとつない青みがかった暗闇に、数えるときりがないぐらいの星が浮かんでいる。 「ほんとになんにもないからな、ここは」 折角作った国道1○○号線は、利用者がほとんどないことでも有名だった。 あまり丁寧に脇に寄せていなくても、クラクションを鳴らす車など通りはしない。だからといって、道路の真ん中に大胆に止めっぱなしにしているのもどうかと思うが。 「みくらー、チェンジ」 大柄な高田が近づいてきて、ハイタッチ。 運転手交代である。 「行くぞ社長」 いつまでも空に向って両手を突き上げている社長を引っ張って、車に乗り込んだ。 高田は極めて安全運転である。中型トラックでは力を発揮しきれていないのではないかと思えるぐらい、余裕でハンドルを回す。大型車を至極丁寧に乗り回す、心優しきトラック野郎の風体が漂っている。 「ドクター、地図見てなくてもいいんじゃない?」 やっぱり場所を変わらないのは医者だけだ。助手席で地図を見ること。この仕事だけは譲らない。 「それもそうだな」 「そうそう。一本道で迷えって方が難しいよ」 しかし稀代の方向音痴にかかると、自分たちがどっちを向いているのかわからなくなって、一本道でも迷えてしまったという実績があった。斜め後ろで夜だというのにサングラスをかけている人物には。 「なぁ」 運転中かそうでないかに関わらず、常に寡黙な高田からふいに声がかかった。 「ん?」 利き手だけをハンドルに残して、真っ直ぐ指で前方を指す。 「人か」 「そうだろうな。止まるぞ」 その人らしきものがはっきりと視界に入ったところで、車は止まった。 背筋の曲がった老人が一人。 道路の真ん中に。 「おばあさんか。何してんだろ」 「どっちにしろ危ない。おい!」 高田は窓を開けて首を出し、叫んだ。 「は?」 女性の老人、老婆は何も言わなかった。高田が一人、危ないからどいてくれと叫んでいる。老婆は少し何か身振りをした。高田は大きくうなずく。 「乗せてもいいか、あの老人」 「何で」 「どうもどこかへ行きたいらしい」 前方には老婆がぽつんと立っている。 「いいか」 後部座席の社長に向って、身を乗り出して聞いた。 「いいよ」
2003年06月18日(水)
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