 |
 |
■■■
■■
■ 見張り台の上のめがね
黄色い土ぼこりが舞う。この村へたどり着くには、いやでも強風にさらされて全身黄色くならなければならない。一番近くの町からざっと一昼夜歩き通してようやく到着するような距離。この村は、距離だけ見ればそうS級の中のS級の辺境ではなかった。 口の中まで黄色になるかと思うほどの風に吹かれてまで、ここに来る者は少ない。なぜかといえば、それほどの価値がないからだ。金になりそうなものは何もない。ただの貧しい岩肌と砂塵ばかり。 一筋の飛行機雲が、地上に現れた。 「おー」 双眼鏡なしでもはっきり見えるが、格好いいから双眼鏡を使うことにしている。 訪問者だ。岩肌の上を滑るように、砂煙が湧き立つ。見張り番は、二階建ての家の上に無理やり作った三階ぐらいの高さから、身を乗り出して観察する。 歩いているぐらいじゃ、ああはならない。あの真っ直ぐ伸びる蛇の足跡のような、くっきり一本の黄色い嵐。 「来たな、配達屋」
懐かしい風景を見ていた。 朝目を覚ましていた時には残っていた感覚が、急に冷めていく。あれはなんだったのか、ぼんやり思ううちに早くも忘れてきた。 「おはよー」 気のいい、テンションの高い同僚がにこやかに笑った。
2003年06月02日(月)
|
|
 |