池ポエム
ハンス



 魔女たちの生活

 もう少し速く歩けとかなんとか、ぶつぶつ言っている師匠の後を追って街外れまで来た。この辺りにはもう商店はない。細々とした小川が流れていて、今にも踏み抜けそうな古い橋がかかっている。それを渡ると、いつもの一日は最終段階だ。
 「師匠。花が咲いてますよ」
 赤い葉に緑の花という、逆転したような色合いの木が建物の横に広がっていた。実はこの木は、師匠の木だったりする。
 「ふぅん」
 「なんですか、そのふぅんて。自分が主治医みたいなもんでしょう」
 師匠は植物には興味がないふりをする。ふりってわかっているのは、この木みたいに、枯れかけになっていたものは放っとけない性分だからだ。この木は、この今から入ろうとしている赤いレンガの一軒家の人のもので、家主さんは師匠の友達をかれこれ30年はやっている。前に木のことを相談されて師匠が何か処置したらしい。その現場には、僕はいれてもらえなかったけど。
 「木なんてのは、ほっといても育つもんだ」
 枯れかけたから治したのは誰でしたっけ?ちらりとも木を見ずに、師匠の姿は厚い木の扉の中に消えた。ノックもしていない。毎度恒例のことだから、いいけど。

2002年11月25日(月)
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