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■ 魔女たちの生活
北の山には魔女が住んでいる。 僕も、北の山に住んでいた。あの頃は。
『魔女たちの生活』
世の中には、その出会いが一生を決めてしまうような幸せな師弟関係というものがあるという。偉い人の伝記など読むと、そういった類の人生の師、一生の理解者的存在が必ずといいほどページを割かれて書きたてられている。あのヘレン・ケラーにサリバン先生というように。だとしたら、僕のこの師匠は僕にとって最良の出会いだったのだろうか。いや、絶対違う。万が一そうだとしても、僕はいやだ。 「クリス」 師匠の声がする。まるで少女のように幼い、高い声。ったく、自分の年齢考えた声色使えっての。なんてぐちったら杖でおもいきり叩かれた。 「掃除」 「終わりましたよ、師匠」 こう見えても僕は掃除は得意だ。というか、掃除ぐらいしか師匠に教わったことがない。そこそこ毎日きれいに過ごせるのは僕のおかげだというのに、師匠はニコリともしないで竹ぼうきをこっちに突き出した。 「落ち葉、掃いて。そろそろ落葉がひどくって」 「……はい」 そうだった。ここ、北の山はやたら木が多い。木が多いと、当たり前だけど葉が多い。秋になると仕事がひとつ増えるのだ。 僕が古ぼけたほうきを振り回している間、また師匠は家の奥に引っ込んでしまった。あの人は大抵家から出てこない。まぁ、年が年だから無理して外に出ろっていうのも酷だけど。それにしたって一日中家から出ずに、かといって退屈そうにもしていないなんて、僕にはわからない。僕はといえば、こんな誰も尋ねてこない山奥から出てどこか町へ出かけたい気分だ。そうそう、生きた年数なら僕より100年は長い師匠だけど、たまに連れ立って歩くと妙なコメントが聞けておもしろい。 (つづく)
2002年11月09日(土)
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