++ 突然の事故で記憶と左眼を失ってしまった女子高生の「私」。臓器移植手術で死者の眼球の提供を受けたのだが、やがてその左眼は様々な映像を脳裏に再生し始める。それは、眼が見てきた風景の「記憶」だった……。私は、その眼球の記憶に導かれて、提供者が生前に住んでいた町をめざして旅に出る。悪夢のような事件が待ちかまえているとも知らずに……。 ++ 乙一さんのホラーって、あまりぞくぞくすることがなかったのですが、これは…。かなり怖かったです。 というかぐろい。想像ができるだけに、尚更。 人間の身体は、興味関心でいじっていいものではありませんよ>三木さん 記憶を失った「私」が、外界に違和感を感じる過程もリアルなかんじがします。すごい。 ところで、この本の中に「アイのメモリー」という作中の人物が書いた童話が出てきます。これって、eye(=眼)のメモリーなんですね。 この作中の童話、オチは哀しいものなのですが、美しく優しい場面でもあります。 話自体の終り方よりも、この作中童話の方がすきです。
もっとだ! もっと! 鴉は思いました。もっと目を集めて、少女に世界中のものを見せてあげたい。世界中の人間の目を、この嘴を使って集めてこよう。そうすればこの子は、きっと大喜びするにちがいない。 彼女が眼球を隠して保存しているガラスの瓶、それをいっぱいにしよう。感激のために涙を流す少女を見て、鴉は誓いました。
乙一:暗黒童話,p.22-23,集英社.

| 2004年09月13日(月) |
Φは壊れたね PATH CONNECTED Φ BROKE/森博嗣 |
++ おもちゃ箱のように過剰に装飾されたマンションの一室に芸大生の宙吊り死体が!現場は密室状態。死体発見の一部始終は、室内に仕掛けられたビデオで録画されていた。タイトルは『φは壊れたね』。D2大学院生、西之園萌絵が学生たちと事件の謎を追及する。(裏表紙より抜粋) ++ 新シリーズです。 楽天ブックスさんで森先生のインタビュウがあり、そこで「本を買ったその金額以上の価値を、あなたが作品から得ることを願っています」と締めていました。 得ました。 これまでのシリーズと、どこが違うのか明確にできませんが、印象として確かに違う、と感じました。それだけで金額以上の価値です。 新しいキャラクタも、国枝先生も、お言葉だけ登場の犀川先生も、もちろん西之園嬢も、すてきです。それも価値。いろんなところでにやりとしてしまいました。特に国枝先生で。 S&M、Vときて、これは何シリーズになるのでしょう。それも含めて、次作「θは遊んでくれたよ」に期待しています。
本当のところ、真実とは、けっして目の前に姿を現すことはないのだから。特に、人間が行うこと、人間が考えることは、さらに曖昧なものであり、因果関係を数式のように結ぶことはほぼ不可能だ。たとえできたとしても、そのほとんどは、平均的、あるいは代表的な一つの仮説を示しているにすぎない。それで納得する人間がいる、という現象に基づいた解決の一手法とはいえ、これもやはり妥協の産物である。
森博嗣:Φは壊れたね PATH CONNECTED Φ BROKE,p.284-285,講談社.

| 2004年09月11日(土) |
骨音 池袋ウエストゲートパーク�掘神佚聴疥� |
++ 世界で一番速い音と続発するホームレス襲撃事件の関係は?池袋ゲリラレイヴで大放出された最凶ドラッグ「スネークバイト」の謎とマコトの恋のゆくえは…。(裏表紙より抜粋) ++ IWGPの第3弾。 ドラマ化された表題作「骨音」と、マコトの母親が活躍する「西一番街テイクアウト」、波の上の魔術師を彷彿とさせマコトとタカシの池袋への愛(笑)がわかる「キミドリの神様」、現実に起こりそうなドラッグ・パニックの「西口ミッドサマー狂乱」の短編4つが入っています。 タカシが出てきて、王様っぷりを発揮するシーンがたくさんあって、それだけで幸せでした。 ドラマと原作は別物だとは思っていても、マコトは長瀬くん、タカシは窪塚くん、のビジュアルしか浮かんでこないから不思議です。
「おれは強くない。毎日なんとか踏ん張るだけで必死だ。ここにいるGボーイズの王様だって強くなんかない」 おれがタカシに目をやると、やつはうなずいて見つめ返してきた。 「だからエディ、おまえも自分の足で立て。不幸を誰かのせいにするな。おまえが自分の足で歩けば、同じ誰かが助けてくれる。おまえが歩くなら、おれもいっしょに歩くよ」 (略)片足だろうが、片親だろうが関係ない。世界がどんなに悲惨でもおれたちは最後まで自分の足で立つ。それがストリートでしのぐには、なにより大切なのだ。
石田衣良:骨音 池袋ウエストゲートパーク�掘�p.298,文藝春秋.

| 2004年09月10日(金) |
にゃんこ亭のレシピ/椹野道流 |
++ 銀杏村は奇妙な村だ、と言う人がいる。 妖しが、いたるところにあたりまえに生きている村。風に、雲に、木々に、光に――人間の隣に、ごく自然に存在している村。 東京に住むゴータの元に、ある日、届けられた一通の手紙。それは祖母が亡くなったのを報せるもの。そして同封されていたのは、銀杏村に残された彼女の家の鍵だった。 祖母の家で暮らしはじめたゴータの、穏やかでどこか懐かしい、春夏秋冬、不思議の日々。(表紙折り返しより抜粋) ++ 奇談シリーズに飽いてしまった(すいません)私を救済してくれるかもしれない新シリーズ。 おいしいものを作れる男性はすてきです。
「人生短いのに、女しか愛せないより、色んな人間を愛せたほうが楽しいだろ?やっぱ、菓子職人に必要なのは愛よ。甘いもんは、甘い手で作られなきゃ美味しくならねえの。わかるだろ?」
椹野道流:にゃんこ亭のレシピ,p.154,講談社.

| 2004年09月05日(日) |
ソウルドロップの幽体研究 Spectral Speculation of Spil-Drop/上遠野浩平 |
++ <生命と同等の価値のある物を盗む>奇妙な予告状が届いた高級ホテルの一室で、強大な権力を持つ老人の影武者が殺害された。そして、厳重な警備の中、なぜかキャンディがひとつ失くなっていた。サーカム保険の調査員伊佐俊一と千条雅人は、”ペイパーカット”の仕業と認定。傍目にはどうでもいいとしか思えない物を盗み、同時にその人の命を奪う――謎の怪盗を追う二人は、同じ予告状が届いた巨大ホールへと向かう。五日後に開かれる天才女性歌手の追悼ライブで怪盗が何を起こすのか!?(裏表紙より抜粋) ++ 新しいシリーズです。 シリーズにならなきゃおかしいよ!というところで終っていて、結局ペイパーカットって何もしてないじゃん!なのです。 ブギーさんと同次元の話らしく、時系列はジンクス・ショップの後と見受けられます。 他にも、伏線らしきものがアチコチにばら撒かれているので、きちんと回収されることを願います。 伊佐と千条のキャラクタもかなりおいしいし、早く自作を…。
「(略)我々だって、誰一人として信じることなどできない。だが――そうなんだ。いつもだ。どうでもいいとしか思わない物しか盗まれず、そして――同時に誰かが死んでいる。それがペイパーカットの顕われ方なんだよ」
上遠野浩平:ソウルドロップの幽体研究 Spectral Speculation of Spil-Drop,p.34,祥伝社.

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