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2004年08月26日(木)   QED 〜ventus〜 鎌倉の闇/高田崇史

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「”神”は三種類に分類される……まず第一が、大自然。次は祖霊。最後は、時の朝廷に対して戦い、恨みを呑んで亡くなっていった人々」。銭洗弁天、鶴岡八幡宮、御霊神社……鎌倉をそぞろ歩く奈々、沙織の棚旗姉妹に、桑原崇が説く「鎌倉=屍倉」の真実!源三代にまつわる謎の答えが、闇の中に白く浮かび立つ!!(裏表紙より抜粋)
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久々のQEDシリーズ。
相変わらずの薀蓄で、鎌倉の名所・旧跡の生臭い云われを語っています。
タイトルのventus は「風」というラテン語らしいのですが、まさに風のように歴史は土地の上を流れているわけで、諸行無常です。
今後鎌倉を歩いたら、背中に誰かの恨みを感じてしまうかも、と思ってしまうくらいに怨霊に満ちた鎌倉。でもきっと、各土地でそれぞれのこういう歴史があるのでしょう。
ちなみに「鎌倉の闇」は「かまくらのくらやみ」とよむようです。



「(略)まさに鎌倉というのは、一つの城だったんだ(略)頼朝という操り人形を、中に閉じこめておくための城だ。(略)交通の要所は、たった七ヶ所だけ。そこを抑えてしまえば、外部との連絡は完全に絶たれてしまう。そして頼朝は――孤立する」


高田崇史:QED 〜ventus〜 鎌倉の闇,p.174,講談社.












2004年08月18日(水)   小生物語/乙一

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Webで連載(?)中はほとんど読めなかったので、単行本化を切に望んでいました。
どこまでが現実(小生=乙一)で、どこからが虚実(小生≒乙一)なのか、曖昧です。
でもおもしろい。
小生=乙一さんとは思いませんが、小生も乙一さんの一部かなと。



5日間ほどかけてようやく角川書店の本の書下ろしを仕上げた。(略)その書き下ろし短編のヒロインは、電車に轢かれて指だけになってしまった女性の話であった。だから小生の頭は、現在、指一色に埋め尽くされていた。指だけの肉体というのは、案外、便利そうに思えた。(略)指以外の部分がないということは、もう太ももを蚊にさされることもないし、オヤシラズが生えてくることもないのだ。キーボードを押すこともできるので、仕事をするのにも支障はない。小生もいつか指だけの人間になりたいと思った。


乙一:小生物語,p.208-209,幻冬社.












2004年08月12日(木)   新本格魔法少女りすか/西尾維新

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心に茨を持った小学五年生・供犠創貴と、”魔法の国”からやってきた転入生・水倉りすかが繰り広げる危機また危機の魔法大冒険!これぞ「いま、そしてかつて少年と少女だった」きみにむけて放つ、”魔法少女”ものの超最前線。魔法は、もうはじまっている!(裏表紙より抜粋)
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新シリーズです。
どのへんが新本格なのかはわかりませんが、魔法少女であることは確か。
りすかの変身後(アダルトVer.)のイラストは読者へのサービスショットですかね。電車で読んでいて、思わず閉じてしまうくらいセクシィ。イラストレータの西村さんの好みなのか、西尾氏の趣味なのか。
で、もうひとりの主人公創貴。イタイ子ですね。こんな精神的にアダルトな小学5年生、嫌。今後、りすかとの関係が変われば、少しは性格も変わるかな(無理か)。
とりあえず西尾氏、こんなに伏線蒔いちゃって…期待しちゃってるので、ちゃんと回収してくださいよ。



「き、貴様、貴様、こともあろうか、恐るべきことに、『魔法使い』を『使おう』などというのか!」
「その通り。ぼくこそが、『魔法使い』使いだ(略)りすかに会って、そうなると決めた。魔法使いなんて言っても、奴ら全然魔法を使いこなせていやがらない(略)だったらぼくが使ってやるしかないだろう。ぼくが使ってやらなきゃ誰が使ってやるって言うんだい?」
「こ、子供の――人間の考えることではない!」
「それがどうした、ぼくは子供で人間だ!(略)じゃ、あとは好きにやっちゃっていいよ――水倉りすか」
「こ こ ろ え た!」


西尾維新:新本格魔法少女りすか,p.62-63,講談社.












2004年08月09日(月)   終の神話 地号の章 封殺鬼シリーズ27/霜島ケイ

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「俺たちが出会ったのは、――あれは神だ」
星神と反目する、柿色をまとう異形の存在。その正体は須佐之男命(すさのおのみこと)であった。
天津甕星を封じるため、韴御霊剣を奪うべく『本家』はついに石上神宮への奇襲を決行する。だがそこには、高良の内通によって事態を知った中央の策略があった。
神の剣をめぐって、石上の地で『本家』と中央の戦いの火蓋が切って落とされる。(表紙折り返し抜粋)
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いつ終る、いつ終ると思っている封殺鬼シリーズですが、次巻でも終らないような気がします。
神話の神様まで出てきて、展開が読めなくなってきましたが、ラストで弓生と聖が幸せならそれでよいです。



「――戸倉さんが」
言い差し、少しだけ間をおいて、高良は言葉をつづけた。
「戸倉さんは僕を信じると言いました。何をしても、たとえ裏切ったとしても、僕はイイヤツなんだそうですよ」(略)
「嬉しかったんです」


霜島ケイ:終の神話 地号の章 封殺鬼シリーズ27,p.191,小学館.













2004年08月06日(金)   ダーリンは外国人/小栗左多里

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外国人の彼と結婚したらどーなるの?るぽ。
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とにかくおもしろかった。
異文化コミュニケーションを横から除き見ることがこんなにおもしろいなんて、思いませんでした。
このマンガの中で、ダーリンのトニーが
木→a tree
林→a grove
森→a forest
(林を縦にふたつ書いて)→a jungle
(林の上に森を書いて)→a amazon
と他の外国人に説明している場面(p.94)が、なるほどでした。もちろんそんな漢字はありませんが。



「日本人はユーモアを理解できないからねー」
なんてホントに言われたりします
そんな時は大きな声でこう言おう
「そんなわけ、あるかーっ!!」


小栗左多里:ダーリンは外国人,p.108,メディアファクトリー.













2004年08月04日(水)   オメガの空葬 ハイスクールオーラバスター/若木未生

シリーズ23作目。
前作が出たのがもう1年半以上前になりますね。いつ出るのか、とあまり期待をしないで待っていた甲斐がありました。
あとがきでご本人も書かれていますし、前作でも触れていましたとおり、今回は里見十九郎さんのためのお話。この方、壊れっぷりが巻を重ねる毎にひどくなってきているのですが、屈折率の高い硝子のような方だな、と評価しています。
物語は、そろそろ第2部の佳境のようです。シリーズ2作目のセイレーンの聖母からずっと続いてきた、幻将皓との恋着のような畏敬のような愛憎のような関係(妄想50%)の決着はどうなるのか楽しみです。
さらには黴の生え始めた忍さまの往く末も。



「愚かだな(略)あるがままの自分を見よ」
箴言のごとくに。
うながした。
「おまえ自身の姿を見てみるがいい。それは、すでに、僕が告げたものに成っている」


若木未生:オメガの空葬 ハイスクールオーラバスター,p.198,集英社.















ゆそか