ジュンコとか、お父さんとか、言ってみれば世間様の基準からははずれてしまった人々が生きていくためには、例えば、大学というのは非常に良い「防護壁」になってくれる。
お父さんは相当変わっている。なにしろ、「なり」がすでにおかしい。いつもスウェットパンツみたいなものしかはかない。靴はスニーカー。革靴なんてはかない。Tシャツしか着ない。スリッパがキライで、ジュンコの中学に忘れ物を届けに行って裸足(若い頃は靴下もキライだった)で校内を歩いて教室まで行ったら、それを見たジュンコの同級生があれは誰だと騒いだとか。 でも、そんな変なヤツでもT大数学科に入れば、ああそうか、と皆が納得して(=あきらめて?)くれる。だってそこは普通じゃないからね。それに守られて今までも無事に生きてこられたのだ。
ジュンコも一般的な高校生とは随分かけ離れてしまった。妙なことばっかり考えているし、常識もあまりないから(私の躾が良かったので(ウソ)彼女はちゃんと常識も知っているはず。でも芸高に入ってからというもの、常識的に生きることを意識的に拒否しているようでもある。それは多分アーティストとして生きるという道を選択した者の矜持でもあるのだろう。)多分、私のような職に就くことは絶対にムリだと思う。もちろん、全然そんなことをしたいとは思っていないだろうけど。
「でも、そんなジュンコだってここで一発芸大に入れば、ああ、大したもんだったんだ、ってみんなが認めてくれるんだよ。」とお父さんは言う。
そうだよねぇと深く頷いてしまう。
しかし「ここで一発芸大に」ってあなた、ファイト一発じゃないんだからさぁ・・・
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