| 蛍桜 |
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| もう昔話か |
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おとうさん、 おとうさんはどうして、おかあさんを幸せにしてあげなかったの? おとうさん、 おとうさんはどうして、独りが平気なふりをしたの? 思い返せば知らないことはたくさんある おとうさん、 おとうさんは、おかあさんがいなくても平気だったの? おとうさん、 おかあさんが出て行ったあと、一回でも泣いた?後悔した? おとうさんとおかあさんの絆が、 どれほど深かったのかは知らない おとうさんとおかあさんの溝が、 どれほど深かったのかも知らないよ でも、おとうさんとおかあさんは 最後まで気持ちがすれ違ったまま もしくは お互いの気持ちが通じ合わないまま お別れしたんだね おとうさん、 おとうさんは死ぬ前に、死ぬ瞬間に、誰を思った? おとうさん、 おとうさんは私に、おかあさんのもとに戻ってほしくなかったのは 独占欲?意地?プライド? おとうさん、 おとうさんは本当に、おかあさんが好きだったの? 二人が仲良くしている姿なんて いくら思い出してもなかった でもおとうさんが笑ってて おかあさんが笑ってて それぞれ一人ひとりが笑っている姿は思い描けるの おとうさん、 おとうさんはおかあさんと結婚して 私が生まれて、幸せを感じた? おとうさんは死ぬとき、幸せだな、って死ねた? そんなはず、ないよね 二人が通じ合っていなくてもいいから 無理矢理でも仲直りしてよ、なんて言えないけど でも、おとうさん、 おとうさんはおかあさんを選んだんだよね? そして、おかあさんも、おとうさんを選んだんだよね? それが、二人の答えだよね? おとうさん、 おとうさんが死んだ後ね おかあさん、怪しい人に「おとうさんは地獄で苦しんでいるから毎日経を読みなさい」 って言われて、毎日毎日仏壇の前でお経を読んでたんだよ 明らかに、だまされていそうなのに おかあさんは、おとうさんのために読んでたんだよ おとうさんのことが嫌いで 出て行ったわけじゃないんだよね? 今だっておとうさんのためにいろんなことしてるんだよ そりゃおかあさんの自己満足かもしれないけど でも、ねえ、おとうさん、 おかあさんは、おとうさんのこと忘れてないんだよ 愛した人として、残っているんだよ おかあさんが新しい彼氏を作ったって 多分ね、いまだって、たまに思い出すと思うんだよ おとうさん、 おかあさんとたくさんデートした? ねぇ、二人にひと時でも幸せだと思えるときがあった? 私が生まれてきた意味、あった? 二人の血を引き継ぐ意味は、あった? 姉は二人いるのに 戸籍をとりにいけば、私は二女って書かれていたの おとうさんにとって、私は二女だった?三女だった? おとうさんは、おかあさんのことも おかあさんがつれていた子供のことも愛せた? ねぇおとうさん、 もしおとうさんがおかあさんを愛せていたのなら 私にも、誰かの愛し方を教えてほしかったよ でもおとうさんの娘だもんね きっと、うまくいかないに決まってる 不器用だもんね おとうさん、 おかあさんが出て行った時、悲しかった? 私には悲しそうに見えなかったのは強がりだった? おとうさん、 おとうさんが、ポーカーフェイスだったのかクールだったのか それともやんちゃだったのか、覚えてないんだ 性格のひとつも、知らないの でもね、おとうさんの笑顔が、かわいらしかったってことだけ なんとなく、ほんとぼんやりと覚えているんだよ ねぇ、おとうさん、 おかあさんはその笑顔に惚れたのかな? おとうさん、 もし今おとうさんが生きていたら 私はうざい、とか、きもい、とか、言っていたのかな そうだとしたら私は おとうさんが死んでくれていてよかったと思うよ 私はおとうさんにそんなこといいたくないから 近くに居すぎて当たり前で傷つけられるなんて そんなバカげた子にはなりたくないから おとうさんも、おかあさんも、愛せる子になりたかった 休みの日はおとうさんやおかあさんと、出かけたかった おかあさん、 おかあさんは今幸せですか? おかあさんは、今、どれくらい無理をしているの? 毎日毎日仕事で、辛くないはずないのに 洗濯も、料理も、掃除も、なにもかも全部やってくれて 自分がやることが当たり前のように振舞ってくれて 私、自分が甘やかされていること、知ってるよ もっと、家事の手伝いしなきゃいけないなって思うのに おかあさんがあまりにも普通に振舞うから 当たり前なんだって思い込んでたよ おかあさん、 おかあさんはうちら3姉妹の中で誰が一番好きですか? やさぐれていた長女や うそばっかりつく次女や なんにもはなさない三女 おかあさん、 うちらが不器用なのは、おかあさんのせいじゃありません だから責任を感じないで 私は長女のことはよく知らないよ ただ私よりも重い過去を背負っていることはなんとなく知っているだけで 元ヤンだったかもしれないし そうじゃなくても、やさぐれていたのかな、っていうイメージがあるだけで 怒ったら怖いよね あの巻き舌は、怖い 長女と、父親が違うって聞かされたときは ショックっていう言葉が似合わないくらい ああそうなんだと思ったよ 別に関係ないよ ねえちゃんは、ねえちゃんなんだもん おかあさん、 白状すると、ねえちゃんのことは苦手です 11も離れていると何はなしたらいいのか、わからない 気を使ってしまう でも、おかあさん、 ねえちゃんは、大切な妹だと、なんども言ってくれました 血が半分繋がっていないこと 私よりも知っているはずのねえちゃんが、そう言ってくれたんだよ おかあさん、 おかあさんの娘はね みんな思いやりがあると思うんだ おかあさんに似て、優しさがあると思うんだ カタチが違っても不器用でも でもね みんな、おかあさんの娘に生まれて よかった、って思ってるんだよ おかあさん、 体がどんどんいうことがきかなくなって くるしいんじゃないのかな? 年齢を重ねてきて 少しずつ不安になってきてるんじゃないのかな? いつか階段が上れなくなって そのうち歩けなくなって 寝てすごすようになって 私、そんなおかあさん、見たくないんだよ 苦しすぎて、見てられないんだよ でも、いつかはそうなるなら 私は、おかあさんのためにできることをしたいから 無理だけはしないでほしい おかあさんが、ねえちゃんの結婚式で 泣きそうで、こらえていたこと知っていたよ 泣けばよかったのに おかあさんの涙、見たかった いつも、おかあさんを追い詰めてごめんなさい 学校いかないって我侭いって、ごめんなさい 高校に入るとき ねえちゃんが中退したから 私が卒業するよって約束したこと 覚えていたよ でもおかあさんが覚えているなんて思っていなくて 中退しようとして、ごめんなさい あの約束を破ろうとして、ごめんなさい おかあさんは私が思っている以上に 私のこと、みてくれていたんだよね おかあさん、 なんだかんだで私は幸せです おかあさんの娘に生まれて、幸せです 他の家に生まれたいとも思わない 他の家をうらやましく思うこともない 当たり前にあるこの場所が、好きです おかあさんがいなくなることだけは考えたくない でも現実として、近くにあると思うと おかあさん、 こんな私で、ごめんなさい おかあさん、 多分、マザコン並みにおかあさんのこと好きだよ 最近、固有名詞が出てこなくて、アレ、コレっていうようになって 口から言葉が潤滑に出てこなくなって 考え込む時間が増えて会話にならなかったりするけど そういうとき おかあさんが歳をとっているんだと実感して悲しいけど おかあさん、 いままでよく頑張ったね もうおかあさんだけが我慢しなくてもいいよ 頑張るからね 私、頑張るからね おとうさんとおかあさんが産んだ命だから きっと頑張れるでしょう? きっと頑張れるんです |
| 2007年05月08日(火) |
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