蛍桜

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Raining6

「なにしてんだよ」
そう言うしかなかった。やっと見つけた君は、やっと捕まえた君は、病室の白いベッドで横になっている。やせ細って、華奢だなんて言えないほどにやせて、目を背けてしまうほどに無残な姿だった。
えへへ、と君は笑った。でも、目は笑ってなかったね。その笑顔に苛立ちが溢れて、僕は病室を飛び出した。君は、僕を引き止める言葉を何一つ言わなかった。君のことだから、引き止めても何も出来ないって思ってたんだろうね。
それから何度か病室に訪れたけれど、君はいつも眠っていた。手にそっと触れると冷たくて、君が生きているのかさえ分からなかった。本当はもっと一緒にいたかったのに、僕のプライドが許さなかった。病室を訪れるのは一週間に一回。僕の中でそう決まっていた。

ねぇ、今思えば、僕はなんて意味のないプライドをもっていたんだろう、って思うよ。本当に。

僕は君のぬくもりがほしくて、君の生気のある瞳で見つめてほしかった。君のふっくらした唇とキスをしたかったし、いつも笑う君の隣にいたかった。
でも君は冷たくて、死んだような目をしていた。体はやせこけて、笑顔さえなかった。
学校帰りの夕方、夕陽を見ながら君に会いにいった。
君は珍しく起きていて、ベットの上に座っていた。窓の外をずっと眺めながら、僕には聞き取れない声で何かを呟いていた。
「なぁ」
君は僕のほうを向いてはくれなかった。窓に映った君の顔が、あまりにも悲しそうだった。
「付き合おうよ」
君は小さく首を振った。いまにも折れそうな首を。
「俺、ミキの何なのか知りたい」
その日、君が僕を見ることはなかった。僕は1人で散々泣き言をいい、帰った。
2006年08月05日(土)

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