蛍桜

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夢の物語

夢を見たんだ
確か、以前にも何度か見たことのある夢

夢は3回見ると正夢になるというけれど
それが本当なら、正夢になってよ



初めの舞台はどこから始まったのか覚えていない
ただ逃げ出したんだ
この世の中が嫌で違う世界へ逃げ出したんだ
嵐の中、たくさんの人を巻き込んで
幼い少女だけ、辿り着いたんだ
その世界には、前にいた世界と何も変わらなかった
幼い少女は何も知らないまま育っていった
でも、ずっと、一人ぼっちだった

いつも誰かに追いかけられていた 精神的に
どこか監視されていた
いつもどこかから撮影されているような気がして
いや、されていて
すべての画面に少女の顔が映っている
自分で、自分の撮られている姿を見せ付けられて
みんなに後指さされるんだ
なんでかなんて分からなかった
でも、自分と同じようにされている女性を見かけるんだ
少女は、その女性にすべてをなすりつけようとした
けれども、それは出来なかった
その女性も、同じだけ苦しんでいるのに
話をするどころか、一緒に悩むどころか、遠ざけた

カメラから逃げ回る
こうやって言葉だけでいうと、少し可笑しいけれど
夢の中の映像としては、化け物にでも追われてるような
あまりにも恐ろしかった
捕まったら死んでしまうんじゃないかと思うほどに

世界のすべての人が敵だった
普段 歩いているだけなら普通の人々なのに
画面に映る少女の姿を見ると その時点で敵になる
誰も信じられないとか、そういうんじゃなかった
しょうがないな、こういうものなんだって
そう思うしかなくて、誰も嫌えなかった
でも、ある日、ある男の子が、
一緒に歩いてくれるようになった
その男の子は、蝋職人だった なんでだろうね
独りじゃなかった
画面に自分の顔が映るたび嫌になるけれど
一緒に映ってくれる彼が居た
一緒に後指指される彼が居たから平気だった
ある日、少女は彼の子供を宿った
お腹は膨れるけれど、産まれてくる気配はない
医者は、何も言わなかった
いや、産めないとはっきりいったかもしれない
そこらへんは、よく覚えていないけれど

まあ、そんなことは忘れて(ぇ)いつも逃げていた
自分の家なんてなくて、いつも逃げていた
その世界は、いつも夜で、どこまで行っても夜で
昼も何もなかったから時間が経過しているのかも分からない
だから寝る必要もなかったし疲れることもなかった

ある日、少女がいつも通り逃げながら歩いていると
自転車に乗った自分が通り過ぎるのを見た
あれは、自分だったんじゃないか
そう男の子にいうけれど、そんなはずないよ、と言う
どこか誤魔化しているような でも
そんなはずない、と自分に言い聞かせる

この後はどんなことがあったかな
よく覚えていないけれど

男の子は、自殺をした
首吊りとかではなく、グロイ死に方をした
少女は助けを求めた 叫んだ
近くの家へ駆け込んだ 助けて、と言った
けれども、その家の住人は、カセットテープのように
ただ同じ台詞を繰り返すだけだった
普段どおりの台詞を 普段どおりに続けている
表情も変わらない 無表情に
つけられたテレビだけが笑い声を運ぶ
不気味だった まるで、人形のようだったから

少女は、男の子のもとへ戻った もう事切れていた
世界はすべて崩れていっていた
人々は皆、人形のようにカセットテープのように
あの家の住人のように、感情も何もなかった
男の子を失ったこの世界は ダメになった
なぜなら
この世界の住民はすべて彼の作った蝋人形だったから
彼が動かしていた蝋人形だったから
そして
その少女自身も

少女だけは感情を持った 他の世界から来たから
この世界の人々とは違うものを持っていた
だから、あの男の子は一緒にいてくれたのか
すべては嘘だったのか
男の子は罪悪感を感じて一緒にいて
そして、死んでいったのか

少女は泣けなかった 涙なんて持ち合わせていない
また独りぼっちになってしまった
だから感情を捨てることにした
お腹に宿ったと思っていただけの子供
そんなの、意味ない 産まれてこないのだから

少女は、蝋人形になった
感情も何も持ち合わせていない蝋人形になった
いや、戻った、と言うほうが正しいのだろうか

自分という存在はなかった
勘違いしていただけ

彼も罪悪感で一緒に居てくれただけ

もう存在している意味もなかった
だから
せめて 彼が作ってくれた蝋人形に戻ることにした

火に炙られて溶ければいいと思った


2004.8.27 3:36
2004年08月24日(火)

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