風のひとり言
kaze



 冷酷

この前見かけた光景。
クライアントからの帰り、某JRの駅前に救急車が一台止まっていた。
「なんかあったのかな?」と思いながら、改札を抜けホームに上がってみると、
そこには70をとおに過ぎた位のお婆さんが倒れていた。
おそらく仰向けに転んでしまったのだろう。
後頭部からは少量ながら、血が流れていた。

救急隊員が救護している周りには、結構な数のやじうま。
あちらこちらで、ヒソヒソ話しをしている。
「倒れちゃったのねぇ〜」
「危ないわねぇ〜」
「大丈夫かしらねぇ〜」・・・など心配している言葉が聞こえてくるが、
その表情を見てみると、およそ心配しているような顔つきをしていない・・・
そして、耳に入った極めつけ・・・
「やぁね〜血が流れて・・・汚いったらありゃしない・・・」

おいっ!おばさん!それはないだろう?
そんな口を叩くあんたの体内にも、赤い血が流れてるんじゃないのか?
汚いだぁ?本人の身にもなってみろよ<お・ば・さ・ん
それとも何か?おめぇのは緑だとでもいいてぇか?

などと考えていたら、ふと昔のこと思い出した。

もう何年も前になるが、車で東京の警視庁の前、桜田門の交差点を右折していた時、
目の前を走っていた中型バイクが、他の車の幅寄せにあい、いきなり転倒した。
「あらあら」と思いながら、車を止め「大丈夫ですか?」と降りていった。
バイクの青年は「大丈夫です。すみません」と言っていたのだが、
その時自分の後ろから警官が1人。
開口一番「はい。免許証と車検証持ってきて」
「はっ?何もしてませんが?」
「だって君、接触事故だろう?」
その時、バイクの青年が「違います」と言ってくれたから事なきを得たが、
彼が意識不明や、死亡・・・なんてことになったら、
間違いなく逮捕になったんだろうと思うとゾッとする。
これじゃ冤罪も増えるわけだと、つくづく思った。

そしてその時、止めてある自分の車横を通り過ぎる車の中から、好奇の視線を数多く浴びた・・・

都会の人間の冷酷さをまざまざと見せ付けられた思いだった・・・
そして、今回もまた・・・・・・


2002年04月17日(水)
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