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■ 女神の棲む家<2>
後からチドリに聞いた話だけれど 僕はそこらへんにころがっていたチドリを拾ってきて、自宅につれこんで勝手に看病していたらしい。 そう言われれば、そんなこともあった気もするけれど どこで、どんな状態で、どんなふうに彼女を拾って家まで連れてきたのかはもう記憶が曖昧だ。 地獄のような介護漬けの十日間の前の記憶がほとんどない。 外傷後ストレス障害というやつだろうか。なんてことだ。 とにかく、そんなわけで僕にとってはチドリはいつのまにか僕の家にいて、いつも寝こんでいて、当然のような顔をして僕のベッドを占領していた。 彼女が僕のベッドで寝起きしている間、僕はドミナの宿屋に泊まったり1階の暖炉の前の椅子に座って窮屈な体勢で寝ていたりした。
必死の看病から数日後。 いつものように洗濯したシーツを2階の窓から屋根に干していると、背中に痛いほどのチドリの視線を感じた。 いつも僕が2階に上がってきても、不機嫌な顔で知らん振りしている彼女にしては珍しいことだった。 シーツを干し終わった後、振り向いて僕は言った。
「……何か、あるの?」
彼女はやはり相変わらずの仏頂面だった。
「暇だ。」
ある程度予想のついていた言葉に苦笑が洩れる。
「じゃあ、話をしない?色々聞きたいことがあるんだ。」
彼女はうん、とも言わなかったが厭とも言わなかった。 目を逸らすことなく僕の目を見つめてきたので、僕は勝手に肯定だと捉えて窓辺に腰掛けた。 それから、まず一番気になっていたことを最初に尋ねた。
「どうして、あんなところにいたんだい。」
“あんなところ”がどんなところなのか今では自分でもわからないけれど、このとき僕は確かに彼女にこんなふうに尋ねた。 その時からすれば、まだ数日と経ってない頃の話だったから覚えていたのだろう。 彼女はゆっくりと口だけ動かして答えた。
「わからない。」
僕はちょっと驚いたけど、できるだけ平静を保とうと努力した。
「……記憶喪失?」
「今までどこにいて、なぜあの場所に居たかという過去が、そんなに大事なのか?」
「……今まで生きてきた過去の記憶がないっていうのは、結構重大な問題だと思うけど。」
「大切なのは、今ここにいるという事実だろう。」
見事な議論のすり替えに、僕は思わず隠そうとしていた呆れ顔が表に出てしまった。 それを見て、チドリは苦虫を噛み潰したような顔で
「お前だって、自分が母体から生まれ落ちた日の明確な記憶なんざないくせに」
冗談でやっているのかとも思ったが、彼女の目は本気だった。 付合ってられない、と思った僕は小さく溜息をついてこれ以上彼女の過去を詮索するのを諦めた。
「……もういいよ、名前は?」
真面目に話を聞いてもらえないまま話題を変えられたことに、憮然としながら彼女が答える。
「私を拾ってくれた礼にお前につけさせてやる。」
いい加減にしてくれ、と思った。 もしかしなくとも、自分は馬鹿にされているのかもしれない。 でも、それでも彼女の目はあくまで真剣だった。 このとき、唐突に僕は、いちいち彼女のすることに理解を求めたり、腹を立てたりしていては話が何も進まないのだということを悟った。 悪乗りして意地でもついていかなければならない。僕は腹を括る。
「……千鳥。とりあえず、チドリと呼ばせてもらっていいかな。」
その名前に特に意味はなかった。なんとなく、羽根に怪我を負って巣から飛び立てない鳥のイメージが浮かんだくらいで。 言い忘れていた言葉を付け足す。
「それから、一応言っておくと僕の名前はエンジュだ。」
訝しげにチドリが言った。
「なんだ、一応って。」
「どうも、名前を教えても君は僕の名を呼んではくれなさそうだから。」
到底叶いそうにない淡い期待は、それが軽い失望に変わる前に自分でケリをつけておく。 はじめて、彼女は声をたてて笑った。 おかしくて笑っていると言うよりは、人を小馬鹿にしたような耳につく笑い声だ。 物凄く意地悪な皮肉な笑顔なのに、妙に魅力的で目が離せない笑顔だった。
「良い勘だ。」
たぶん、今までもこれからも、彼女が僕の名を呼ぶことはない。
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やっぱ出し惜しみなのかなぁ 今日、本当に書きたかったのは次からの話。 時間の関係上かけなかったー…… 明日でテスト終わるので、明日からはちゃんと書けるはず。 でもその前に、風魔さんとツナミにお手紙かかなきゃ……(先月のテスト明けにもこんなこと言ってた気がするんですけど
2003年12月04日(木)
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