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■ 女神の棲む家<1>
チドリとであったのがいつだったのか
あまりハッキリとは思い出せない。
第一印象は「綺麗な女の人」だった気がする。
今思えば笑ってしまうけど。
朝日に煌いている海みたいに艶めく髪とか 病的に白く透き通った肌とか 瞳にうっすら影ができるほど長いまつげとか 儚くみえる腕や首の細さとか はじめてあったときにはわからなかったけど いつも精気に満ちた強すぎる鋭い光を持った瞳だとか 彼女は確かに美しい。少なくとも傍目には。 僕の好みじゃなかったけどね。 でも、ああして彼女にどんなに虐げられても(断言するが僕はけしてMではない) 赤の他人である…しかもどう転んだって害しかもたらさないような彼女のために、わざわざ専用の部屋までこしらえてやって、ひとつ屋根の下で一緒に過ごしてきたっていうことは 自信を持って認めたくは無いけど、結局、僕は彼女に好意を持っていたんだろうな。少なからずその容姿も影響して。 ……美人は得だね。内面が多少キズモノでもそれなりの扱いを受ける。
チドリに関わる一番古い記憶を辿ろうとするといつも、死にかけた彼女を必死に看病していた自分の姿を思い出す。 彼女は常に身体のどこかがおかしかった。 でも、その頃の僕はそんなコト知らなくて、目の前の酷い状態の病人に情けないけど、ただただ、うろたえていた。 彼女の熱は下がらず、意識も戻らず。そして、原因もわからず。 そんな状態が四日続いた。 本格的に他人の看病をしたことのない僕は本気で慌てた。 書斎から、ほこりをかぶった医学書や薬剤学の本なんかをひっぱり出してみたけど、さっぱり駄目だった。本はそれなりに知識を持った読むべき人が読まないと、その存在にほとんど意味は無い。近くには頼れる医者もなくて、心細かった。 でも、医者も医学の知識もないからって病人は待っちゃくれない。僕はとにかく、自分の知っている限りの病人にしてあげるべき行動をとった。 意識の戻らない彼女の為にお粥を作って無理矢理食べさせようとしたり、汗でぐっしょりになったシーツをこまめに換えてやったり、おでこを冷やしてあげたり、僕はいじらしいほど一生懸命看病していたと思う。 それでも彼女の熱は下がらず、意識は戻らず、回復に向かう兆しもなく、かといってそれ以上に悪化している様子もなく、そして相変わらず原因不明だった。十日目の朝だった。 僕は身体的にも精神的にも酷い状態だった。介護疲れってやつだ。 この十日間、一度も家の外に出た記憶がない。気を張りすぎて、自分がご飯を食べるのを忘れたくらいだ。冗談抜きで、僕がいつ倒れてもおかしくなかった。
彼女の痛々しい呻き声は途切れることなく続いた。
目をぎゅっとつむり、ずっと悪夢にうなされてるみたいに苦しげで。 額から、全身から汗が吹き出ていた。 でも、不思議なことに血色はそんなに悪くなかった。 無理矢理粥を食べさせようとしたけど、意識が無いハズなのに彼女はかたくなに口を閉ざして、実際は何も食べていなかった。十日間ずっと。 でも彼女はしぶとく生きていた。十日前の状態から、良くも悪くも進展せずに。 ある意味すごい生命力だった。今にも死にそうな状態のはずなのに、でも生きてる。 そして、疲れた頭で僕は思った。もしかしたら……
「この人は、めったなことじゃ死なないんじゃないか…?」
口に出したら、余計それは真実味が増した気がした。 一度思い込んでしまうと、人はなかなかその考えから離れることができない。 僕の口は止まらなかった。
「簡単には死なないうえ、いくら看病しても状態が良くならないっていうなら」
その先を続けるのは戸惑った。でも、続けた。
「僕が必死に彼女の面倒を見る必要はなくなるわけだ。」
肩の荷が、ストンと降りた。 気持ちが晴れやかになった。 屁理屈だとわかっていたけど、深くは考えたくなかった。その時の僕は心底疲れていたのだ。 身体も心も疲労困憊なのに、冷静な判断など下せるわけも無い。 とにかく外に出たかった。嫌な言い方だけれど、他人に縛られたくなかった。
「今までご飯を作ったって食べてくれなかったんだし、熱だって下がりもしなければ上がりもしなかったんだから。大丈夫さ。」
短期間の冒険の準備をしながら、僕は自分に言い聞かせるように呟いた。 彼女を見殺しにするのか、と自分を責める声もあった。 でも、今はそれよりも外の世界への興味関心憧憬その他諸々の感情が明らかに勝った。 僕は本来、思慮深いたちだ。 病人をほったらかしにして家を空けるなんて無謀なこと絶対しない。 ただ、このときはちょっとばかり状況が異常だった。 欲望を無理に抑圧していると、人はある日突然とんでもない行動に出るものだ。 というよりは、治る見込みのない患者の介護に僕の頭も少しやられていたのかもしれない。
「もしかしたら、僕が出かけている間に体調が良くなるかもしれないし。」
もう一度、自分を慰めるために呟いた。 馬鹿らしい、そんなことあるわけないのに。 そう思ったけど、今は嘘でもそう信じたかった。
そして、二日ほどの短い冒険を終え、恐る恐る自室のベッドを覗くと 出掛けた前と変わらない状態で、彼女は横たわっていた。 ただ、もう呻き声は聞こえなかった。 僕は驚き、おののき、息を飲んだ。 死んでしまった!? いや、当然予想すべき結果だったのだけど、僕は心のどこかで、 なんとかなるだろう という甘い考えでいた。 自分の部屋で人死にが出るとは夢にも思わなかった。
「ど……、どうしよう……!!」
どうしよう、ではなくすでにどうしようもないのだが、取り合えず何か言わずにはおれない。 ところが、そうやって僕があわあわしているところで 死人だと思われた女の両目が開かれるんだから驚きだ。安っぽいホラー映画じゃあるまいし。 あぁ、そうだ息をしてるかどうか確認するのを忘れていた、と僕は今更ながらに思った。 首を少しも動かさないままで、彼女は喋った。
「お前が、この家の主か。」
あれだけ大量の汗をかき、水を少しも飲んでいないはずなのに彼女の声は少しも枯れていなかった。透明なのにハッキリしていて、静寂に静かに染みていくようだ。
「……う、うん。」
生きている。
「一応、感謝はしておく。寝る場所を提供してもらったからな。」
生きている、彼女は生きている。 その事実だけで僕は頭も心ももう一杯だった。 あぁ、良かった。生きていてくれて良かった。 涙目になりながら、何度も心の中でその言葉を繰り返した。
「だが、生憎だが私はお前が嫌いだ。」
「は?」
突然吐き捨てるようにぶつけられた言葉に、僕はとっさに反応できずに間抜けな声で聞き返すことしかできなかった。
「善人面してヘラヘラ笑ってんじゃねぇ。反吐が出る。」
そういって凄い形相で僕を睨みつけた後 彼女は布団を深くかぶりなおして背を向けてしまった。
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なんか対抗してますよ、この人。爆
二人の設定に矛盾が出てきて(ていうか、ふたつの案が出てきて)あー、どうしようと考えていたけれどもうなんでも良いから書き出してしまえ!という。なげやり主義。 書いてるうちにわけがわからなく。いつものことか。
ていうか、テストなんだってば。 おいおい。何してるんだ。
昨日の話だけど。 FM聴いてたらこっこが歌っててびっくりした。 なんか地球環境うんたらかんたら(…)の初回特典でCDついてくるんだってさー 3,000円……なかなか痛いよ。シングルで出してくれよぅ てか、やはしレンタルはできないんでしょうか……
出し惜しみするのが悪い癖なのかもなー あと、不恰好でも良いから勢い良く真っ直ぐに 当たって砕けろー!! みたいな精神がない。 失敗したくないし、成功したものしか出したくないし、褒められたいし。 そんな感じ。 「このアイデアは最高だから、大事に大事にとっておこう。」 ていう出し惜しみ精神は作家にとっても、もっとも駄目なことだ。って何かで見た気がする。誰が言ってたんだっけな。石田衣良あたり? 自分が一番好きなところを、なかなか書かない。 ちらっ、ちらって焦らしてる間にいつのまにか書けなくなってるという… 笑え……ない。笑えないよアンタ!!汗 なんて間抜けなんだ…… 涌き出たアイデアは使いきって空っぽにならないと新しいすばらしいアイデアは浮かんでこないのですよ、て言ってた気がするなぁ。 素晴らしいアイデアはともかく、失敗や不恰好を恐れずに書いていきたいな、と思いました。がむしゃらにたくさん。いきなり清書じゃなくて、下書き書いてるような気持ちで。
そんなことテスト週間中に決意されても。 むしろテスト週間中だけの決意かなぁ。汗
2003年12月03日(水)
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