on a wall
亜栗鼠



 主との出逢い 7/(主と出会う前の話2)

結局離婚することは出来なかったが、私の心は変わらなかった。
夫が一人で生きていける環境が整ったら離婚するつもりでいた。

やり直す条件
一人でも生活していける環境を作ること。
私の気持ちが戻らなければ離婚すること。
性欲処理は自分ですること。
そして、もう二度と「死」を口にしないこと。

この約束は、2週間もしないうちに壊された。
どうしても自分で性欲を処理することが出来ないとセックスを求められる。
嫌だと言っても、「お願い・・お願い・・」の一点張り。
それでも拒否し続けると、「夫婦だろ。おかしいじゃないか。そろそろ子供も欲しいぞ。こんなことがいつまで続くんだ。耐えられない。」そんなことを言い始める。
約束が違う・・・
これ以上拒否し続けると、また今までと同じことが起きる。
またあの疲労感と脱力感を味わうことになる。
「出してくれるだけでいいから。」
そう言われ、お風呂場でローションをつけてただただ擦る。
私に触れようとする手を払いのけると、たちまち不機嫌になっていくのが分かる。
どこに触れられるのもたまらなく嫌だったのだ。
しかし、露骨にそれを見せると、またキレ始める。
結局私は定期的に性欲処理を強いられることになった。

結局何も変わることはなかった。
次第に、私が離婚を考えていたことなど無かったかのような生活に戻って行った。
また同じことを繰り返している・・・

4ヶ月後、もう一度別れを切り出してみた。
4ヶ月前のことで、私の気持ちも少しくらいは解かってくれているだろう。
などと考えていた私がどうかしていた。
「別れようって言ったらどうする?」
と切り出すと、夫はとたんにキレ始めた。
「まだそんなこと言ってるのか。じゃあ出ていけ。今すぐ出ていけ。早く荷物まとめろ。実家まで送って行ってやるから。早く荷物まとめろ。」
実家まで、約500kmある。
こんな状態の夫が運転する車になんて乗っていられない。
どうせ途中で何かが起こるんだ。
知らない土地で突然車止めて歩き出したりしはじめるんだ。
時速100km以上で走る車のドアを開けようとしたりするんだ。
そんな車に乗ってなんていられない。
夫は、興奮状態で自分の実家に電話した。
「亜栗鼠が別れたいって言ってるんだよ。もう家の中なんて滅茶苦茶だよ。今から実家に送って行くよ。だって亜栗鼠が別れたいって言ってるんだから。」
その間にも、私が手を止めていると、声を荒げて「アンタは早く荷物まとめろ。」と怒鳴る。
私の実家にも電話した。
「亜栗鼠も少し疲れているみたいで、暫く実家の方でゆっくりと休ませてやった方が良いと思いまして。今から送って帰りますので。」
と。
なんて優しい夫だろう。
端から見れば。

そんな状態で帰れる訳が無く、結局今までと同じように夫をなだめ、今までと同じ事を繰り返した。
私も、諦める決心を固めようとしていた。
私はこのまま、こうして生きていくんだ。
自分の感情を殺せば、なんて簡単なことだろう。
自分の心さえ無くしてしまえば、なんて楽な生活だろう。
セックスさえしていれば、夫は機嫌が良い。
セックスさえしていれば、夫は私の言い成り。
簡単なこと。

けれど、どこか諦めきれていなかったんだろう。
私は、どうしても子供をつくることが出来なかった。
子供を作ってしまったら、もう二度と私はここから抜け出せなくなるだろう。
私は、子供に縛られるのが目に見えていた。
最後の砦。
それまでは壊せなかった。
私は何と言われようと、絶対に避妊し続けた。
ズルイだろうか?
いやらしい人間だろうか?
誰に何と言われようと構わなかった。
夫の子供を愛する自信も無かった。


私は女王様じゃない。
言い成りになる男じゃつまらない。
させてあげるセックスなんてもう沢山。

↑エンピツ投票ボタン
My追加する
2002年09月27日(金)
初日 最新 目次 MAIL

あなたの声を聞かせて下さい。
空メールでも喜びます。




My追加
エンピツ