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on a wall
亜栗鼠
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主との出逢い
「強い女にしてあげる。」
どうすればいいのか、私にはさっぱり分らなかった。
強くなりたいのか、強くなっていいのかも不安だった。
何故彼がそこまで私にしてくれるのかも分らなかった。
全て、流れに身を任せることにした。
とにかく、彼は私を救ってくれようとしている。
「少なくとも○○さんの楽しめる方法で。」
私からそう言った。
恐怖と不安はあったけれど、信用できる人だとは思っていた。
「いいんですね。」
そう言われて、恐怖は増したけれど、なんとなく覚悟は出来た。
「では、私は主となり道標となりましょう。」
「主とは・・・ご主人様と呼ぶのですか?」
「まだ呼べないでしょう?」
「はい。」
なんだか少し安心した。
まだ私は何も知らなかった。
「もし、出来ないと思ったら止めてもいいですか?」
と訊くと、
「クーリングオフは法律で認められてますから(笑)」
と。
ご主人様をお試しとはなんて失礼なことを言っていたのでしょう。
「強く美しい女性にしてあげますよ。」
と言われた。
奴隷になって、どう強くなるのか、どう美しくなるのか理解出来ずにいた。
「美しくなれますか?」
と問うと、
「強く賢い女性は美しいですよ。」
と。
とりあえず一度会うことになった。
仕事の調整をつけてくれて、近くまで来てくれると。
が、直前になって私の都合でその日は会えなくなった。
少しホッとした。
その後、電話で話していて、いつの間にか苛められていた。
冷たく低い声
今までとは違う声
私は、恐怖と共に何かに吸いこまれていくようだった。
そして
「ご主人様と言ってみますか?」
そう言われて、私は初めて「ご主人様」と呼んだ。
「私はご主人様の物です。」
者から物になることを誓い、ご主人様の奴隷になった。
なんだか力が抜けていくのを感じた。
これから何が起こるのか、どうなるのか・・・
恐怖と不安
それでも、全てを委ねて堕ちていけばいい。
そんな安心感がほんの少し。
それから数日後、とうとう逢う日が来た。
「私の物だという証を身体に刻み込みましょう。」
と言われていた。
私には夫がいたので、見えるところには痕はつけられない。
その辺は配慮していただいていた。
初めて逢うご主人様。
緊張のあまり、あまり顔を見ることも出来なかった。
今思うと、表情は無かったような気がする。
挨拶を交わし、少しお話しをする。
「私の日記を読んでいたら、最近の私のことは知っていますね?私は確かに亜栗鼠を見ている。けれど、重ねてしまうことがあるかもしれない。代わりにするかもしれない。心の隙間を埋めるために使うかもしれない。それでもいいですか?」
私は「はい。」と頷いた。
私と逢う少し前に、主の以前のパートナーさんが亡くなっていたのだ。
後から知ったのだけれど、彼女と私は偶然にも同じ名前だった。
本当に偶然。
私が本名を名乗ったのは、電話で主と認めた後だった。
とにかく、それでも主は私を見てくれている。
重ねようが代わりにしようが、きちんと私を見てくれている。
それは信じていた。
「では、行きましょうか。」
静かにそう言われて、ホテルに向かった。
部屋に入り、ソファーでくつろぐ。
「どうぞ、煙草吸ってくつろいで下さい。」
と言われ、煙草に火をつけようとした時、
「あ、煙草を吸う前に味見しましょうか。」
と私の顎を持ち上げ
「舌を出せ。」
と冷たく低い声。
言われるままに舌を出すとご主人様の顔が近づいてくる。
「振るえてる。」
とニヤリと笑い、私の舌を口に含んだ。
思いっきり吸われ、舌を噛まれた。
あまりの痛みに気が遠くなり、一瞬頭が真っ白になる。
気がつくと力が抜け、涎を垂らしていた。
舌が痺れる。
これがご主人様の痕。
そして手を握り、真っ直ぐ目を見つめてハッキリと言われた。
「この手を離すな。亜栗鼠が離さない限り、私は決して離さない。」
何度も不安になりながらも、この言葉は私を支え導いてくれた。
首輪をはめられ、私は心を差し出した。
これからどうなるのかも分らず、主に全てを委ねた。
嬲られ、辱められ、私は堕ちてゆく。
恐怖と苦痛、快楽・・・
そして、私は主の胸で泣いていた。
ヒックヒックと嗚咽しながら子供の様に泣いていた。
恐怖の先にある安心が少しだけ見えたような気がした。
恋をしたワケではない。
恋よりももっと強い何か。
主との出逢い、始まり。
家に帰ってからも、舌の痛みは充分に存在感があった。
これが、いつも身も心もご主人様の物だという証。
痛みが、安心に変わる。
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2002年06月17日(月)
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