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| 2005年03月15日(火) ■ |
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| Vol.554 右足を失った彼 |
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おはようございます。りょうちんです。
朝になると、街中が一面の銀世界に変わっていた。そしてまだまだ絶え間なく空から降りてくる雪。この冬何度目の雪かはわからないが、積もったのは初めてだ。 彼はその朝も、いつもと変わらずに出勤をする。バイクのエンジンをかけ、いつもと同じ道を職場へと急いでいた。ただいつもと違っていたのは、降りしきる雪が積もっていたことだけ。そしてその2時間後、誰も予想だにしていなかった一本の電話が、彼の実家へと鳴り響いた。彼の乗っていたバイクが雪道でスリップし、交通事故に遭って病院に運ばれたという知らせ。 電話を取った彼の母は、目の前が真っ暗になったという。取るものも取らずに病院へと出向くと、ベッドに横たわった彼はうわごとのように、「仕事に行かなくちゃ…」と言っていたそうだ。こんなカラダじゃ仕事なんて100%無理なのに、昔から人一倍責任感が強かった彼。診断の結果、右足の粉砕骨折。バイクがめちゃめちゃに大破してしまったにもかかわらず、ヘルメットをちゃんとかぶっていたせいで頭に異常が認められなかったのは幸いだったのだが、右足の切断は避けることができないと医師から告げられた。 昔から彼はやんちゃだった。俺の記憶では子供だった頃の彼はいつだってかけずり回っていて、体力には誰にも負けなかった彼はそのままカラダを動かす仕事に就いた。でも、右足を失った彼はもう今の仕事はできないかもしれない。それだけじゃなく、右足がないというハンデはこの先の人生に大きく影響してくるに違いない。 事故から少しして。俺は彼の入院している病院へお見舞いに行った。ベッドで静かにしている彼はたくましかった昔の彼とは違って見えたが、思ったよりも元気そうだった。彼には右足を失ったハンデの厳しさがこれから始まるのだろうが、そんなことは関係ないというように持ち前の明るさで笑ってくれた。俺は彼に、がんばれとエールを送った。
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