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りょうちんのひとりごと
りょうちん
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2004年11月25日(木)
Vol.525 船は来たけれど

おはようございます。りょうちんです。

彼は密かにずっとタイミングを待っていた。気がつけば、彼の今乗っている船はいったいどこに向かって流されていくのかわからず、それゆえに不安と焦りが知らずに彼のことを苦しめていた。だから、いつか別の船がやってきた時は、すぐに乗り換えよう。ずっとそう思っていた。そんな時、タイミング良く目の前にやってきた別の船。しかも目の前に来た船の行き先は、なんと彼がずっと夢に描いていた方向に向かって進んでいくのだという。彼にしてみれば願ってもないチャンスだ。ついにその時が来たのだ。彼は船を乗り換えるため、あわてて準備に取り掛かった。
しかし。よくよく調べてみると、この船の先行きは非常に険しいようだ。嵐が近づき暗雲が立ち込め、激しい荒波が行く手を遮っている。彼の夢へと向かう船には違いないけれど、現実は厳しくこの船に乗るということはかなりの苦労を覚悟しなければならない。おまけに、この船に乗ったからって彼の思い描く夢に絶対に辿り着けるという保証はないのだ。
穏やかだがどこに流れていくかわからない今の船にとどまるか、それとも困難なのは明らかだが夢の方向に向かっていく船に乗りかえるか。そんな人生最大の究極の選択に迷った彼は、「りょうちんならどうする?」と俺に相談してきた。
俺は数日間考えに考えた末、結局自信を持って言える答えは出せなかったのだが。「やってきた別の船に乗り換えても良いと思うとは、手放しでは言えない…」、という意見を彼に伝えた。雲行きが怪しいとわかっている船に、自ら飛び込んで行くなんてしない方が良い。タイミング良く船は来たけれど、その船が必ずしも良い船旅を約束してくれるとは限らない。一度船を見送っても、また次にやってくる船を気長に待つのも一考であるとも思う。焦る必要はない。そう、俺は思ったのだ。
最終的に、彼が船を乗り換えたのか、それともそのままとどまったのか、それは俺にはわからない。しかし、どっちの船に乗っても、彼の旅はまだまだ続いてゆく。