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りょうちんのひとりごと
りょうちん
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2004年03月18日(木)
Vol.453 激しく燃える炎

おはようございます。りょうちんです。

真夜中に目が覚めて、父はいちばん下の弟の部屋からぱちぱちと不審な音がしているのを聞く。ドアを開けると部屋の中は真っ黒な煙が充満し、すでに燃えあがった炎は手のつけられない状態だったという。大声で弟の名前を呼んだが、返事は返ってこない。父はこの時、部屋に取り残された弟はもう煙に巻かれてしまったと思ったらしい。父の叫び声を聞いた母も飛び起きて、取るものも取らずあわてて階下へと逃げる。すると自分の部屋で眠っているはずの弟が居間から寝ぼけまなこで出てきて、何が起こったのかわからないまま3人は外へと逃げた。
3番目の弟は隣の部屋が炎に包まれているのにもかかわらず、ベッドの上で少しの間考えたあと、当時彼のいちばんの宝物だった野球のユニフォームとグローブを抱えて、窓から物置の屋根伝いに家の裏手へと逃げた。
家の前で家族4人がそれぞれ無事であることを確かめると、我が家はまるで映画のワンシーンを見ているかのようにいとも簡単に火の海に包まれていった。少しの風も吹いていなかったこの夜、赤々と燃える炎はまっすぐに夜空へと向かって燃えあがり、思い出と一緒に灰になっていく我が家を4人は道路越しにただ身を寄せ合って見ているしかなかったそうだ。誰も声を出さず、家が燃えていくことが悲しいとか恐ろしいとかいう感覚もなく、まるで他人事のように4人は立っていた。3月とはいえまだ相当寒かったにもかかわらず、パジャマ姿でもまったく寒さを感じなかったのは、激しく燃える炎のそばにいたからではないだろう。消防車が来て消火作業が終わり、俺のところに連絡が来たのはもう夜が明けてからのことだった。
実家が全焼してから、もう6年。あの時のことは、父も母も弟ももう思い出したくない過去だという。火事のニュースを聞くたびに胸が痛くなるが、その現場に居合わせた父や母や弟は俺以上に胸が締めつけられるのかもしれない。火の用心を、忘れずに。