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2011年11月08日(火)
ゲームのレビューほど、効率が悪い仕事ってない。

『超クソゲー3』(太田出版)より。

(『ゲーム批評』最後の編集長、奈良原士郎さんへのインタビュー「特別企画・伝説の活字系ゲーム雑誌『ゲーム批評』は何に敗れたか?」の一部です。ゲーム雑誌『コンティニュー』の元編集長・林和弘さんも同席されています)

【インタビュアー:『ユーゲー』(『ゲーム批評』と同じマイクロマガジン社から出ていた、中古ソフト専門誌)のライターは原稿料を度外視して、とことんゲームをやり込んでいましたからね。

奈良原:当時のゲームプレイ時間の増大が、僕らメディア側の人間にとって非常に厳しいものになってましたね。『ゲーム批評』の一番のウリがソフト批評じゃないですか? これほど効率が悪い仕事ってないですよね(笑)。

インタビュアー:僕も実感としてわかります(笑)。『ユーゲー』はかなりの部分を思い出で書けますけど、『ゲーム批評』は新作をイチからやらなきゃいけませんからね。

奈良原:それでも割けて4ページですから「どうすんだ?」ってことですよね。そこが時代の流れって意味で大きかったなって思いますよね。だから(100時間以上かかる)『ディスガイア』はマンガに逃げた。このスタイルで本を作ることが難しくなってたのは事実だと思うんです。あとは当時、娯楽全体の中での家庭用ゲーム市場の衰退もモロに受けてたなって印象はあるんですよね。

インタビュアー:あの頃は『脳トレ』とか軽めの携帯ゲーム機用のソフトが流行る一方で、家庭用は重くなる一方でしたよね。

奈良原:DSのヒットが出だしていけるかなと思ったんですけど、じゃあDSのゲームを『ゲーム批評』はどう扱えばいいんだって。

インタビュアー:100万以上売れたメジャーなソフトって、かえって批評が難しいですよね。

奈良原:そうなんです。ビジネス的な観点で『脳トレ』が売れる理由を分析する記事は書けるんだけど、誰がそんな本買うの? って。そうやって考えれば考えるほど「ゲームをどう扱うのか?」っていうスパイラルが非常に大きくなっていったんです。最初に甘くみてた分、そのダメージはより大きかったですね。】

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 『ゲーム批評』は、1990年代半ばに創刊され、2006年に休刊となった「伝説のゲーム批評誌」です。
 当時は、スクウェア批判などのセンセーショナルで歯に衣着せぬ記事(+「メーカーからの広告は入れない」というポリシー)で、一部のゲームマニアからは熱い支持を集めていました。
 そんな『ゲーム批評』の最後の日々を知る、奈良原元編集長へのロングインタビュー、とても興味深く読みました。

 ファミコンが誕生したのは、僕が小学校高学年の頃ですから、「大学に入ったら、東京に行って、『ログイン』か『ファミ通』か『BEEP』でアルバイトするんだ!というようなことを、けっこう本気で考えてもいたんですよね。

 しかし、このインタビューを読んでみると、「ゲームのレビュー」というのは、かなり「割に合わない仕事」であるということがわかります。
 まあ、ちょっと考えてみれば、わかりそうなものなのですが。

 書評家・杉江松恋さんが書かれていたものによると、書評家も、ある本についてのあとがきや書評を頼まれた場合には、たくさんの関連書籍(同じ作者の過去の作品や、その作者が影響を受けた作品など)を読んで、レビューを書かれるそうなので、「1冊だけ本を読めばいい、簡単な仕事」ってわけではなさそうです(ただし、書評家がみんな、杉江さんと同じスタイルで仕事をされているかは不明です)。

 それにしても、「大作ゲーム」を「隅から隅まで遊び尽くしてからレビューを書く」のだとすれば、それに必要な時間や手間に比べると、レビューの対価は「割に合わない」ですよねやっぱり。
以前、某有名ゲーム週刊誌のクロスレビューのコーナーで「担当者がほとんど遊ばずに点数をつけているのではないか」という疑惑が取り沙汰されていましたが、本当にあれだけのゲームをやりこみまくってから点数をつけるのは、現実的に不可能だと思います。
それを「何時間か遊んだだけのレビューなんて信頼できない」と考えるか、「何時間かで魅力を伝えられないようなゲームはダメだ」と思うかは、人それぞれなのでしょう。
正直、これだけたくさんのゲームが発売されていると、「何時間かでもひとつのゲームに触ってからレビューする」だけでも、大変な手間に違いありません。

 ものすごく複雑な、マニア向けで時間がかかるゲームがある一方で、『脳トレ』なんて、たしかに「現象としてはレビューできても、そのゲームそのものを何ページも使ってレビューするのは難しい」でしょうし。

 ネットでは「攻略サイト」がすぐにできてしまいますし、他の人の「感想」も知ることができます。
 ゲーム雑誌とそこで「ゲームをレビューする人たち」にとっては、どんどん難しい時代になってきているのは間違いないようです。