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2008年05月12日(月)
「色んな撮影をやってきましたが、パンチラほど難しいものはないです」

『スズキが覗いた芸能界』(松尾スズキ著・新潮文庫)より。

(松尾スズキさんと磯山晶(いそやま・あき)さんとの対談の一部です。磯山さんは、松尾さんの盟友・宮藤官九郎さん脚本の『池袋ウエストゲートパーク』『木更津キャッツアイ』などの作品を手がけておられるTBSのプロデューサーです)

【松尾スズキ:そう言えばさ、『恋の門』のときに酒井若菜のパンチラを撮らなくてはいけなくてね。事前に実験しとけばよかったのにやってなかったから、現場では思っていたようにうまくいかないの。

磯山晶:(即座に)それは衣装が硬かったんです。

松尾:そう、衣装が硬かったの。あれ? 言ったっけ、この話?

磯山:ええ、パンチラがうまく撮れなかったという話はお聞きしました。パンチラほど難しいものはないですよ、今までの経験則から言うとね。実際にはよくあるんですけど、作ろうとしても中々できないんですよね。

松尾:(しみじみ)自然なパンチラはできないんだよねえ。何十回と風を送ったり、釣り糸でひっぱったりしたんだけど、うまくいかない。衣装が硬いのは分かってたんだけど。もともと、酒井若菜自体は映んないのよ。パンツのアップになるから。あまりにNGが続くから酒井さんが完全にキレちゃって。無理もないよね、芝居の問題じゃないんだから。そのときは諦めて、最終日にパンチラを撮ることにしたわけ。「若菜ちゃんじゃなくていいから」ということにして、パンチラ女優を午後6時に呼んで。前のシーンが押しちゃったから、夜中の3時まで拘束することになっちゃったんだけど。

磯山:パンチラ女優って(笑)。私はその話を聞いてたから、気をつけることにしました。たまたま『特急田中3号』の第1話で、栗山千明ちゃんのパンツが見えると鉄道柄のプリントが見えるというのを作家が書いてきて――。

松尾:しょうもな(笑)。

磯山:「松尾さんがパンチラ撮るのが大変だと言ってたな」って思い出して、衣装合わせのときに、ちょっとでも硬い素材のスカートを持ってくるたびに、駄目出しを繰り返しました。細かいプリーツが入っていて薄い生地じゃないとパンチラしないんですよね。

松尾:せっかくだから、読者の人にも覚えておいてもらいたい。

磯山:適切な衣装を選んだところで、とても大変だったんです。歩道橋の上でパンチラすることになってたんですけど、栗山千明ちゃん、一日中……。「本当にごめんなさい」っていうくらい……。色んな撮影をやってきましたが、パンチラほど難しいものはないです。】

〜〜〜〜〜〜〜

 観る側にとっては、「ちょっとした視聴者サービス」という感覚で、一瞬「おっ」と画面に釘付けになり、次の瞬間にはすぐに忘れてしまう、この「パンチラ」なのですが、現場では、こんなにこだわって撮影されているのですね。
 磯山さんの「実際にはよくあるんですけど」という言葉には、「ウソだ、僕は生で『目撃』したことって、人生で2回くらいしかないぞ!」と反論したいところなのですが、このお二人の話によると「細かいプリーツが入っていて薄い生地じゃないとパンチラしない」そうです。まあ、そう簡単にパンチラするような服ばかりだったら(着ている女性は)困るのでしょうけど。

 「どうでもいいようなシーン」に見えるけれど、制作側にとって、「パンチラ」には、けっこうこだわりがあるのだなあ、と驚いてしまいました。「とりあえずパンツ見せとけばいいだろ」というものではなくて、より「自然なパンチラ」を目指して、一日中撮影するなんてこともあるみたいです。顔も映らないのにパンチラのためだけにNGを出されまくったら、そりゃあ、酒井若菜さんじゃなくてもキレそうですが、「パンチラ女優」なんていう人もいるんですね……

 「手だけのタレント」みたいに専業化しているのかどうかは不明ですけど、確かに、「このパンチラは酒井若菜じゃない!」ってわかる人がそんなにいるわけないですし。逆に、けっこう本人がやっている場合が多いということのほうに、驚くべきなのかもしれません。

 それにしても、自然の力っていうのは偉大なんだなあ……