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2007年01月15日(月)
「この謎は難しすぎる!」とみんなに言わせる「究極のゲームバランス」

「週刊ファミ通・2007/1/26号」(エンターブレイン)のコラム「桜井政博のゲームについて思うこと」より。

(桜井さんが『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』を苦労して解きながら考えたこと)

【任天堂のデバッグ期間、通称”スーパーマリオクラブ”でのエピソードなのですが……。とあるゲームをプレイした人のレポートに、”この謎は難しすぎる”と書いてあったそうな。別の人も、”自分はクリアーできたけど、この謎は難しいです”というようなことを書いている。複数の人が”きびしい”を連呼しているので、もっとやさしくするべきかな? と考えた開発者。でも、気がつけばみんなノーヒントでクリアーしていたという。なんだかんだで、全員解けてるじゃん!
 行き詰まったらたちまち進めなくなるけれど、がんばればなんとかなるようにできている! めげそうなときも、そんなことを意識しながらクリアーしていました。

(中略)

 謎解き系のゲームに行き詰まったとき。仕掛けに気がつかないのは自分がゲーム下手なのではなくて、たまたま気がつかなかっただけ、そんなことを思いながら進めてもらいたいです。攻略サイトや攻略記事は時間の節約になっていいところもあるけれど、ゲームが漢字の書き取りのようになっていくのも忍びない。1本のゲームを新鮮な気持ちでクリアーできるのは、生涯でたぶん最初の1度だけ。
 苦戦するのは当然! がんばればできる! そう信じて、もうひと押しがんばってみてほしいです。】

〜〜〜〜〜〜〜

 僕はすでに『トワイライトプリンセス』挫折中なのですが、確かに、ゲームを制作している側からすれば、今みたいに発売直後から攻略サイトがどんどんできてしまうような時代というのは、やりにくいだろうなあ、と思うのです。すべての人が攻略サイトを見られる環境にあるわけではないだろうし、その一方で、あまりに簡単にしすぎてしまっては「やりごたえがない」とプレイヤーを落胆させてしまうし。いずれにしても、「最後まで攻略サイトを全く見ない(見られない)人」と「ちょっと行き詰まったら、すぐに攻略サイトを見に行く人」に対して、いずれも満足してもらえるくらいの「難易度調整」なんていうのは、本当に難しいことですよね。
 僕がこの文章を読みながら感じたのは、ここで紹介されている「どのテストプレイヤーのレポートにも”難しすぎる”と書いたあったにもかかわらず、みんな解けていた謎」というのが、まさに「ベストの難易度の謎」なのだろうなあ、ということでした。プレイヤーというのは繊細なもので、自分が解けないような謎は許せないけれど、誰でも解けるような謎に対しては「バカにされた」ような気分になるのです。そして、プレイヤーにとってもっとも理想的な謎っていうのは、「他の連中は解けないけれど、自分だけは解ける謎」なんですよね。「オレってすごい!」って優越感に浸れる謎。
 でも、そういう難易度設定というのは、個々のプレイヤーは「難しすぎる」とレポートしてくるものなので、多くのプレイヤーの感想の蓄積が必要となるわけです。さらに、テストプレイヤーたちと一般プレイヤーでは、基本的なゲームに対する慣れや熱意が違うでしょうから、「万人受けする、適度な難易度のゲーム作り」というのは、まさに至難の業だといえるでしょう。
 この話を読んでいて、僕は『ドラゴンクエスト2』で「すいもんのカギ」を持って隠れていた「ラゴス」というキャラクターのことを思い出しました。『ドラクエ2』が流行っていた時代、「ラゴス」がどこにいるのかわからなくて行き詰まった人がたくさんいたのですけど、僕はほとんど迷うこともなくラゴスを発見したのが、当時はちょっと自慢だったのです。あの頃はまだ、そういうひとつの謎解きの答えが、何ヶ月間も話の種になるような時代でした。
 おそらく今だったら、ラゴスの居場所がすぐにわかっても、みんな「攻略サイトで見てしまっている」ので、何の自慢にもならないでしょう。もしかしたら、それが「難所」として話題になることさえ、なかったかもしれません。そして、攻略サイトを見ながら「簡単すぎる!」と叫ぶプレイヤーたちのために、やたらと時間と手間がかかり、攻略サイトを見ないと解けないような謎解きや「究極の武器」「隠しダンジョン」が粗製濫造されていくばかり。
 それでもやっぱり、一度攻略サイトを見ることを覚えてしまうと、なかなか「自力で最後までがんばる」ことができなくなってしまうんですよね。なんだか、迷っているのがものすごく時間のムダのように思えてしまって。
「こんなのわかるか!」と吐き捨てたくなるような謎でも、何時間かがんばれば自力でクリアできていたのかもしれないのに。