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2006年09月30日(土)
「金は天下の回りもの」という幻想

「papyrus(パピルス)2006.2,Vol.4」(幻冬舎)の「村上龍 Money Talks Vol.4」より。

【Q2:金は天下の回りものと言いますが、ちっとも回ってきません。金持ちのところに集まるように出来ているような気がしますがどうなんでしょう?

村上:「天下の回りもの」という言い方が曖昧です。回るというのは、あなたがもらったいくばくかのサラリーが、コンビニでオニギリ代になり、その代金の一部がコンビニの従業員の時給として払われ、またオニギリ屋さんにも入り、そのお金がまた何かに使われるという「循環」を意味しているだけです。当然あなたの銀行預金が企業の設備投資に使われたり、払った税金で地方にダムができたりというような循環もあります。
 それは配分ではなく単なる循環なので、たとえ100万年待ってもあなたにまとまったお金が回ってくる可能性はゼロです。投資や融資、それに起業することで循環するお金を「すくい取る」方法もありますが、それは圧倒的にお金持ちのようが有利です。お金持ちはお金を持っているだけではなく、「情報」を持っているからです。】

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【たとえ100万年待ってもあなたにまとまったお金が回ってくる可能性はゼロです】ああ、なんて身も蓋も無い回答なのでしょうか!でも、これが「現実」なのでしょうね、きっと。少なくとも「金は天下の回りものだから」と夢想するばかりで、坐して大金が転がりこんでくるのを待っているだけでは、お金はただ「通り過ぎていくだけ」なのです。宝くじで一発逆転!とか言ってみても、結局ギャンブルで唯一の「勝者」は、胴元なのです。

 僕自身は、この「金は天下の回りもの」という概念は嫌いではなくて、「直接自分の利益になることではないけれど、まあ、今こうして誰かのためにお金を遣ったり寄付したりしておくことが、何か将来の利益を生むかもしれないから」というおおらかな気持ちは、けっして人間にとってマイナスではないと思うのです。みんなが際限なく「利益追求」をしていったら、やっぱり、あまりにも殺伐としていて生きにくい世の中になってしまいますしね。
 しかし、この村上さんの回答を読んでいると、生まれつきの資産家では無い人が「お金持ち」になるためには、相当の努力が必要である、ということを痛切に感じます。ライブドアの堀江社長のやり方には問題があったのかもしれませんが、逆に、あのくらいやらないと、その「壁」を打ち破ることはできなかったのかもしれません。
 まあ、僕自身は、「自分には回ってこないなあ」なんてボヤきつつも、普通に生きていくほうがラクだな、という気もしてしまうのですけどね。