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2006年03月15日(水)
メジャーって少しダサくないとダメ。

「ダ・ヴィンチ」(メディアファクトリー)2006年4月号の記事「INTERVIEW〜映画に命を吹き込む人々」より。

(「北斗の拳」の「週刊少年ジャンプ」連載時からの担当編集者であり、3月11日から公開中の映画「ラオウ伝 殉愛の章」の製作総指揮・脚本を手がけた堀江信彦さんへのインタビュー記事の一部です。

【今回の執筆で、堀江氏はバックに音楽を流して作品世界に入り込んだ。
「教会音楽や、エスニックなものなど。『北斗神拳』のルーツを考え、シルクロードから中国を経て日本にきたイメージを深く持ちました。映画本編の音楽もそう。シュウが聖帝十字陵に巨大な聖碑を担いで上るシーンの曲は、じつに荘厳ですよ」
 その曲はニューヨークまで遠征、フルオーケストラで録音した。
「僕は『メンズノンノ』の編集長もやってたからわかるんだけど、メジャーって少しダサくないとダメ。だから映画の一箇所にテレビ主題歌だった『愛をとりもどせ!!』を新しいヴァージョンで入れてあります。全編クラシックでくるかと思ったら、ダダダ!と始まる。ウケたい、喜んでもらいたいというダサさ、つまりサービス精神です」
 その『愛をとりもどせ!!』も、フルオーケストラで録った。
「ねぜここに歌が入るのか(笑)。最近、『俺カッコイイの作ったから、お前見ろよ、気に入らなかったら帰れよ」というような突き放した映画が多いけれど、俺たちはマンガ上がりだから、喜んでもらいたい。自分が喜ぶことには限界があるけど、人を喜ばせてその顔を見て喜ぶのは限界がないでしょ」】

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 先週末から公開されている、映画「ラオウ伝 殉愛の章」なのですが、脚本はこの堀江さんが書かれていたみたいです。堀江さんは集英社の「週刊少年ジャンプ」の編集者から編集長を経て、2000年に同社を退社、現在は「週刊コミックバンチ」(新潮社)を出している株式会社コアミックスの代表取締役として活躍されています。
 このインタビュー記事のなかで、いちばん僕の印象に残ったのは、【メジャーって少しダサくないとダメ。】という言葉でした。そう言われてみると、「北斗の拳」そのものも、ストーリーそのものはまさに「少年漫画の王道」なんですよね。ここで堀江さんが例に挙げられている、あの「YOUはSHOCK!」でおなじみの「愛をとりもどせ!!」が使われている場面、僕はまだこの映画そのものは未見なのですが、「なんてベタベタなんだ…」と思う一方で、やっぱりそのシーンは盛り上がるだろうなあ、とも感じるのです。「世界の中心で愛をさけぶ」とか「東京タワー」とか「ハリー・ポッター」とか、「ものすごくメジャーになる作品」っていうのは、確かに、「あんなの珍しくもなんともないのに…」と「違いのわかる人々」からバカにされるくらいの「わかりやすさ」が必要なのかもしれませんね。そもそも、その作品を読んだり観たりしてくれる人の大部分は、「少しダサい、普通の人々」なのですから。
「北斗の拳」そのものは、20年前から全く同じストーリーの作品なのに、こうして今また再評価されているというのは、結局、「王道」には、いつの時代にもそんなに変わりはないのだ、ということなのかもしれません。
 ただ、こういう「サービス精神」ってかなり微妙な匙加減というのがあって、「王道」も度がすぎるとさすがに呆れられてしまうような気もしますけど。