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2005年10月13日(木)
「子どもの集中力を高めるにはどうしたらいいですか?」

「決断力」(羽生善治著・角川書店)より。

【「子どもの集中力を高めるにはどうしたらいいですか?」
 とよく聞かれるが、私は、集中力だけをとり出して養うのは難しいと思う。「集中しろ!」といって出てくるものではない。
 子どもは、好きなことなら時間がたつのも忘れてやり続けることができる。本当に夢中になったら黙っていても集中するのだ。集中力がある子に育てようとするのではなく、本当に好きなこと、興味を持てること、打ち込めるものが見つけられる環境を与えてやることが大切だ。子どもにかぎったことではない。誰でも、これまでに興味を持って夢中になったものがあるだろう。遊びでもゲームでも何でもいい。そのときの感覚であり、充実感だ。それを思い出せば、集中力のノウハウはわかるはずだ。逆に、興味のないことには集中できない。誰でも、自分が集中できる型を自然につくっているはずだ。
 何かに興味を持ち、それを好きになって打ち込むことは、集中力だけでなく、思考力や創造力を養うことにもつながると思っている。】

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 棋士・羽生善治さんの「集中力を高めるためには?」という質問への回答です。なるほど、興味が無いものに対して、「集中しろ」というのは、根本的に間違っているのですよね。確かに、大人である僕も、暗い部屋で面白くないスライドとか見せられていると、どんなに「寝てはいけない場面」でも、ついつい居眠りしてしまったりもするんだよなあ。それで、自分に対して、「ここは集中!」なんて言い聞かせてみたりもするのですが、それでうまくいったためしがありません。むしろ、「全然関係ないことを考えるようにする」ほうが、外見上は「成功」していたりするわけです。
 羽生さんは、まず、子ども時代に自分の好きなものに夢中になることによって「集中体験」を得ることの必要性を書かれています。このとき、集中する対象というのは何でもよくて(現実的には、あまりに周囲に迷惑をかけるものは許容されないでしょうけど)、それによって「集中しているのは、こういう状態なのだ」と学習していくことで、その状態に自分をもっていくトレーニングをする、ということなのですね。その「最初に夢中になるもの」が何であれ、まずは「集中している状態」を体験することが大事なのだ、と。その体験がない人には、ゴールが見えないわけですから、いくら「集中しろ!」と言われても、どうしていいのかわからないのが当たり前。

 僕の大学の同級生には、学生時代には部活ばかりやっていて、試験はなんとかギリギリですべりこみ合格、という感じだったのに、社会人になって、優秀な成果を挙げている人というのがけっこういるのです。「どうしてあんなに部活ばっかりやっていたのに?」と疑問だったのですが、彼らはきっと「集中体験」をうまく自分の仕事に適用しているのでしょうね。逆に、真面目に勉強していたはずなのに仕事に就いてから「自分には向いていない」ということで、辞めてしまった人もいるものなあ。
 それでも、現実問題としては、「どんなにトレーニングしても、全然興味がないことには、やっぱり集中できない」ものだろうし、このようなトレーニングをしなくても、「自分が興味を持てること」を生業にしている人は、正直、羨ましい。その「興味の対象」のなかには、「勉強」とか「接客」みたいな、「ツブシが効く」ようなものがある一方で、よほど才能がなければ、それで生活の糧を得るのが難しいような「興味の対象」もあるでしょうから。
 いくら「集中」できても、その対象が「あやとり」とかだったら、それを生業にするのは、やっぱりちょっと難しいだろうし。