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2005年05月22日(日)
「芸術テロリスト」の密かな憂鬱

読売新聞の記事より。

【今年3月、メトロポリタン美術館などニューヨークの4つの美術館に自作を勝手に展示した英国人画家「バンクシー」が、今度は、大英博物館に、古代人がスーパーマーケットのカートを押しているニセモノ壁画をこっそり展示した。
 この壁画は、「狩りに出かける古代人」の題で、今月16日に「古代ローマの英国」展示室に許可なく置かれ、18日まで3日間、だれにも気づかれずに展示されていた。
 大英博物館スポークスマンは「他の展示品と調和していた。タイトルの付け方も本物そっくり」と、“見事”な手口に脱帽のコメント。
 「芸術テロリスト」と呼ばれる「バンクシー」の事務所は本紙に対し、「大英博物館が私の作品を常設展示すれば、壁画の面白さがわかってもらえるはず」と本人の声明を伝えた。】

参考リンク:名画の間に「名画」展示?(中京テレビプラス1探検隊)

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 その「狩に出かける古代人」というのがこの写真なのですが、さて、この壁画が美術館に飾られていたら、気が付くかどうか…
 まあ、僕が日頃行くような日本の美術館の特別展では、かならず見張りの人(という表現は適切ではないかもしれませんが)が一部屋にひとりはいますし、どの部屋にもまったく来場者がいない、というような状況は、ちょっと考えにくいと思います。僕は行ったことがないのであくまでも想像ですが、おそらく大英博物館というのはものすごく広くて、超有名作品が展示されているところ以外は、ほとんど人が来ないような展示室もあって、そういう部屋には、あまり厳しい監視はついていないんでしょうね。全部の作品にルーブル美術館の「モナリザ」レベルの監視をつけるわけにもいかないでしょうし。
 それにしても、この怪しげな壁画が3日間も誰も気が付かないまま放置されていたというのは、ちょっと不思議な気もします。参考リンクにもあるように、「持ち去られることには神経質でも、持ち込みに関しては無頓着」なのでしょうね。それにしても、壁画を置いて、他の展示品と同じように説明書きまでつけられていたのですから、それなりの手間と時間もかかっているとは思われますが、意外と気が付かないもののようです。
 確かに、一般の美術ファンレベルでは、有名な「目玉作品」は知っていても、「その他大勢の作品」というのは、「ふうん、こんな展示品あるのか…」で通り過ぎてしまうものですし。

 しかし、当の「バンクシー」さんとしては、「気付かれないこと」というのは、果たして、期待した結果だったのでしょうか?
 確かに「古の作品に比べて遜色ない」とか「作品の真贋を見抜く目を持ち、それを主張できる人は少ない」というのがわかったのは事実なのですが、本当は、3日間も「放置プレイ」される前に、「こんなヘンな作品が!」って話題になりたかったのではないでしょうか。「違いがわからない」というのは「インパクトがない」とも言えますからねえ。
 「ヘンなのがある!」って、自分で博物館に通報してたりしたら、ものすごく悲しいだろうなあ……