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2005年04月11日(月)
「萌え」の経済学

毎日新聞の記事より。

【アニメなどの登場人物の性格で、愛らしい「萌(も)え」という感情を意識した書籍や映像、ゲームの市場規模が、03年で888億円に上ることが浜銀総合研究所(横浜市)の調査で分かった。バターやステレオコンポの出荷額と並ぶ規模で、同研究所は「近年大きく膨らんだ市場。無視できないジャンルとして確立している」と分析している。
 「萌え」は芽生えを意味する「萌える」が語源で、読者が特定の登場人物に愛情を覚えることをいう。アニメなどに強いこだわりを持つ「おたく層」から派生した。ストーリーよりも登場人物の容姿や性格の描写が重視されるのが特徴だ。
 浜銀総研は、萌え市場を書籍・映像・ゲームの3分野に分け、書籍は関連するコミックの販売額から273億円、映像は関連アニメビデオソフトの販売額から155億円、ゲームは恋愛シミュレーションゲームの販売額から460億円と推計。おたく層全体のゲームなどの市場規模は約2900億円との推計値もあり、単純比較で3割が「萌え関連」とみられる。
 信濃伸一研究員は「作品を供給する側も、少子化で子供向けのメガヒットが狙えなくなった」と成人向け萌え作品が増える傾向にあると分析する。経済評論家の森永卓郎さんは「可愛らしいという感情を表現した媒体は欧米にはなく、この市場は国際競争力も備えている。市場を支える30代男性には未婚者が増えており、人間とは別のパートナーを求める心理があるのかもしれない」と話している。】

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 いきなり重箱の隅をつつくような話なのですが、浜銀総研さんは、よくこれだけの「萌え関連商品」を調べたなあ、と感心してしまいました。というか、こういうのって、明らかに「萌え」狙いのものから、ボーダーライン上のものまであると思われるのですが、それは、どう鑑別したのだろう、とか。しかし、「おたく層の市場規模の3割が『萌え』関連というのには、なんだか信憑性を感じてしまいます。もちろん、感覚的なものですけど。

 それにしても、もともと日本人は若い(というか「幼い」というべきかもしれません)女性を好む傾向があると言われているようです(もともと日本人女性そのものが、外国人女性と比較すると幼くみられがち、という面もあるようなのですが)。そういう「嗜好」のためか、この「萌え」という市場はもともと潜在的にあったようなのです。でも、それも「ひとつの趣味」だというふうに比較的認知されたのは、ネットの力というのはけっこう大きいような気がします。だって、いくらなんでも、いきなり学校や職場で「萌えキャラ」の話なんてできないでしょうし、そういう趣味の人たちは、けっこう孤独感を抱いていたはずなのに、ネットの世界では、同好の士がいとも簡単に見つかるのですから。そういう状況というのは、今までは「そういう趣味だと、現実に適応できない(イジメられるとか、モテない)から」ということで「転向」して普通の男の子になっていた子どもたちにとっては、逆に、卒業の機会を失われる要因になっているのかもしれません。まあ、世間的に言われがちな、「そういうゲームが、子どもに対する犯罪を生み出している」のかどうかは、僕にはハッキリはわからないし、「萌え」なんて言葉ができる前から、そういう「極端かつ身勝手な幼児性愛者」というのは存在していたことは間違いありません。むしろ、ネットであるとか、最近のネット文化というのは、「そういうコミュニティがなければ、他のもっと『健康的』な趣味に転向していた人たち」を吸収する要因になっているだけ、ということも考えられます。
 いやむしろ、こんな時代だからこそ、「萌え」という言葉を共有することによって、コミュニティに入りたい、という人も多いのかも。

 「負け犬」とか言われながら、現実に立ち向かっていこうとする30代独身女性と、ひたすらバーチャルの世界に安らぎを見出そうとする30代独身男性。ただひたすら、「噛み合っていない世代」なのでしょうね…