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2005年04月09日(土)
パプアニューギニアの屈辱

共同通信の記事より。

【パプアニューギニア政府は、ソマレ首相がオーストラリアの空港での搭乗前の保安検査で靴を脱ぐよう求められたことに抗議し、謝罪がない限り、オーストラリアからの支援受け入れを凍結すると発表、外交問題に発展している。
 ソマレ首相は3月24日、ニュージーランドで開かれた地域首脳会議に出席後、オーストラリア東部のブリスベーン空港を経由して帰国する際、同空港で保安検査員から靴を脱ぐよう求められた。首相は帰国後の28日、国内のテレビで「靴の中には何もないと言った。われわれの地域の指導部への侮辱だ」と怒りをぶちまけた。】

 この「事件」の顛末は、次のようなものです(毎日新聞)

【パプアニューギニアのソマレ首相は28日、オーストラリア・ブリスベーン空港で飛行機を乗り継ぐ際に係員から保安検査のため靴を脱ぐよう指示されたのは「侮辱」だとして豪州政府に抗議することを明らかにした。
 首相は今月24日にニュージーランドで開かれた南太平洋地域の首脳会合に出席後、ブリスベーン経由で帰国する途中だった。搭乗前の検査で靴を脱ぐよう求められた首相は「靴の中に何も入っていない」と主張。待合室に引き返し、しばらくして機内に入ることができたという。
 首相は「このような扱いを受けたのは初めて」と怒り心頭。豪州政府が方針を改めない場合、対抗策としてパプアニューギニアを訪問する豪州側要人に同様の措置を取ると“警告”している。
 これに対し、ブリスベーンの空港当局者は「保安検査すべてに平等に行っており、例外はない」と話している。
 米同時多発テロ後、豪州の空港でも保安検査が強化されており、金属探知機に反応した乗客に靴を脱ぐよう求めるケースは多いという。】

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 この記事を最初に読んだときには、ひょっとしたら、パプアニューギニアの文化では、靴を脱がされるというのはものすごい侮辱であるとか、そういう「背景」があるのではないかと思ったのですが、僕が調べたかぎりでは、そういうこともないみたいです。
 しかしながら、この「事件」については、「一国の首相を疑うとは何事だ!」という観点と、「一国の首相だからといって、絶対に特別扱いはするべきではない」という2つの観点があり、どちらが正しいとは、一概には言えないでしょう。アメリカの空港で、こういう「ランダム・チェック」(と言いながら、実際にチェックされていたのは外国人ばかりで、いったいどこが「ランダム」なのかと言ってやりたい気分でしたけど)を受けたことがある僕は、そんなふうに靴まで脱がされて調べられるのは不愉快ではありますし、「僕がテロリストに見える?」と聞いてやりたい気持ちになったことを思い出しました。でもまあ、逆に、こういう一国の要人でも同じようにチェックするのだ、という姿勢は、一般乗客である僕としては、むしろその「公正な態度」に清々しさすら感じますけどね。偽ランダムより、本当に「全員」にやっているなら、まあ仕方がないかな、と。実際に、この首相がテロリストである可能性は、まず考えられないとしても、そういう姿勢を示すのは大事なことでしょう。その一方で、「ブッシュ大統領でも、当然、靴は脱がせるんだろうな?」とも、考えてしまうのですが(もっとも、大国の元首は専用機利用でしょうから、関係ないのかも)。
 この問題の「落としどころ」というのは本当に難しくて、これだか騒ぎが大きくなってしまうと、かえってオーストラリア政府も「これからは大目にみます」なんて公言するわけにもいかないだろうし、だからといって、セキュリティ・チェックを止めるわけにもいかないでしょう。そして、この問題に、「小国だからといって、バカにしやがって!」というような「国家の威信」めいたイメージまで付加されてしまっては、結局、どちらの国にとってもプラスになるわけがありません。黙って靴を脱いで検査を受けていれば、どうってことはない話だったのかもしれないのに、ここまで来てしまっては、ソマリ首相は、もう引くに引けないでしょうし。
 「パプアニューギニアの空港でも、同じように靴を脱がして仕返しする」というのが、もっとも妥当な「報復」なのかもしれませんが……
 
 それにしても、その「報復」が、「オーストラリアからの支援受け入れを凍結する」という内容であることには、ちょっとびっくりしました。支援を凍結するのではなく、受け入れの凍結。支援する側にもさまざまな思惑や利権があるのでしょうから、オーストラリア側だって困る人は大勢いるとしても、パプアニューギニアの国内は、それで大丈夫なんでしょうか?
 そういえば、こういう国って、日本の周りにもあるよなあ、という気もしたんですけどね。でも、「謝れ、そしてもっと金もよこせ!」と言われるよりは、このソマリ首相の姿勢は、立派だといえなくもないですが。