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2005年04月08日(金)
「モナリザ」の新居のスポンサー

共同通信の記事より。

【フランス公共ラジオなどによると、パリのルーブル美術館に所蔵されているレオナルド・ダビンチ(1452−1519年)の名画「モナリザ」がこのほど新たな専用展示室に移され、6日から公開が始まった。
 専用展示室はこれまでよりも広く、ベロネーゼによる大作「カナの婚礼」の向かい側に位置。防弾ガラスで守られているものの、温度や湿度の調整が行き届き、天井から自然光を採光するなど最新技術を取り入れて保存状態を高めているという。
 同美術館を訪れる年間約600万人のほとんどがモナリザ目当てとされ、これまで展示されていた場所は常に混雑するとされていた。今回の作業は2001年から行われていたもので、総額481万ユーロ(約6億7000万円)の費用は日本テレビが提供した。】

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 日本テレビも太っ腹だなあ、6億7000万円も…なんてことをつい考えてしまうのですが、先日もレオナルド・ダ・ヴィンチとモナリザ関連の特別番組を放送していましたから、そういう「繋がり」あったのでしょうね。ルーブル美術館は、日本人の観光客が占める割合が、ものすごく高いらしいですし。
 ただし、その日本テレビの番組には、
【26日放送の日本テレビ系「超歴史ミステリー!ルーブル美術館の秘密」で名画「モナ・リザ」が2点あり、うち1点が発見されたと紹介されたことに対し、東北大学大学院の田中英道教授(西洋美術史)が28日、「もう1点がコピーであることは学会でほぼ結論づけられている」などとして同局に抗議文を送った。
 田中教授によると、この1点は1980年代半ばにスイスの画商が売りに出そうとしたコピーといい、日テレは「スイスのモナ・リザの存在は専門家には知られていたが、今回日本で初めて映像化に成功した。絵は鑑定中」などとしている。(サンケイスポーツより)】
 というクレームもついており、考えてみれば、それほど密接な関係ならば、「2枚目のモナリザ」がコピーである可能性についても、日本テレビは知っているはずで、それに言及しないで「世紀の発見!」として放送してしまうのはどうかな、という気もするんですけどね。
 僕は、本物の「モナリザ」を観たことはないのですが、このダ・ヴィンチが描いた女性の絵は、おそらく、世界で最も有名な絵のひとつだと思います。「モナリザの微笑」なんていう言葉が、一般的に使われているくらいですから。
 でも、こういう話を聞くにつれ、絵画をはじめとする「芸術」の評価って、いったい何なのだろうな、という気がするのも事実です。「モナリザ」は素晴らしい絵だと思う一方で、もし僕がモナリザの前に立つことができれば、「ああ、これが『モナリザ』かあ…」と感激しつつも、心の中で、「教科書で見たのと一緒だ」とか、考えてしまうに違いありません。たぶん、多くの観光客にとっての「有名な絵画鑑賞」って、「再確認の作業」になってしまっているのでしょう。その絵画そのものへの感動よりも「有名な絵を見ることができたという感動」のほうが、大きくなってしまいがち。ルーブル美術館の三大美術といえば、この「モナリザ」と「ミロのヴィーナス」「サモトラケのニケ」なのですが、ルーブルには、「一ヶ月かけても全部見ることはできない」ほどのさまざまな美術品が収蔵されているそうですから、予備知識がない状態で観れば、「モナリザ」以上に「自分の心に響く作品」だってあるかもしれないのに(というか、たぶんあると思います)、結局、それらの作品たちは、一部の好事家にしか顧みられることはなく、人の気配のない展示室で、いたずらに時を過ごすのみ。
 以前、ボストン美術館に行ったことがあるのですが、この美術館は日本美術の収集で有名で、日本美術のコーナーが、けっこう広くとられているのです。地球の反対側で、昔の日本人の作品を観るというのは、ある意味不思議な体験でもあったのですが、僕がちょっとガッカリしたのは、この「日本美術で有名」な美術館でさえ、肝心の日本関連のコーナーには人がまばらで、大勢の人でにぎわっているのは、印象派のルノワールやモネ、あるいはピカソなどのヨーロッパの作家たちだったのです。いやまあ、僕も大喜びでそれらの有名作家の絵を一生懸命観ていたんですけど。
 正直、僕には「モナリザ」とそのへんの小学生が描いた絵の違いはわかると思うのですが、美大出の美術の先生の絵と有名画家の絵を全くの予備知識なしで見せられて、どっちがどっちと鑑別できるほどの審美眼はないと思います。ひょっとしたら、美術の先生の絵のほうが「好き」かもしれない。そして、そういうふうに感じることそのものは、けっして間違ったことではないでしょう。「芸能人格付けランキング」とかならともかく。
 きっと、モナリザ「だけ」が、万人にとって最高の絵ではないのです。機会があれば、少しでも、他の作品にも先入観なしで目を向けてもらいたいなあ、と思います。いや、僕だってルーブルに行ったら、絶対観ますけどね、モナリザ。