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2005年02月10日(木)
人の本棚を笑うな

日刊スポーツの記事より。

【東京都豊島区の築30年の木造アパートの2階に住む地方公務員男性(56)の部屋の床が、ため込んでいた雑誌や新聞の重みに耐えきれずに抜け落ちた。男性は約2時間後、レスキュー隊員に救出されたが、全身打撲で重傷。1階に住む無職男性(75)は「上の部屋の床が抜けそう」と警視庁目白署に相談に行っていたため、間一髪無事だった。
 目白署の調べでは、6日午後8時ごろ、2階建て木造アパート「目白荘」(全4部屋)の202号室(6畳1間)の床が抜け、男性が大量の雑誌とともに1階に落ちた。助けを求める男性の声が聞こえたため、東京消防庁のレスキュー隊員が、小型カメラのついた棒を駆使して埋まっていた場所を特定。約2時間後に救出した。男性は全身打撲で重傷。
 男性は81年に入居して以来、ひとり暮らし。目白署によると、雑誌は「数千冊」はあり、アパート入居前の70年代のものもあった。「週刊プレイボーイ」「週刊ポスト」や漫画雑誌「少年ジャンプ」のほかに「月刊陸上競技」や「宝塚おとめ」まであり、80年代、90年代のスポーツ新聞もあった。また、森尾由美、小泉今日子、倉木麻衣など時代を問わずにアイドル関連本も並んでいた。総重量は6000キロ(6トン)以上あったとみられている。】

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 下の部屋に住んでいた男性は、まさに「間一髪セーフ」だったようです。階下の人にとっては、まさに「ハタ迷惑な話」でしかないのですが、僕も家に本を貯めこんでいる人間のひとりなので、この「雑誌男」のこと、単なる「迷惑な人」とも思えないんですよね。
 世間には本好きの人というのはけっこういるようで、「トンデモ本」の研究や「トリビアの泉」の監修でも有名な唐沢俊一さんは、あまりに本が家に溢れすぎて書庫を作ったものの、今度はその書庫に本が多くなりすぎて危険を感じ、慌てて床の補強をされたという話を聞いたことがあります。本というのはけっこうかさばって重みがあるものですから、収蔵しておくのは、なかなか大変なんですよね、実際のところ。
 「そんな雑誌ばっかり集めて、どうするつもり?」なんて言う人も多いだろうし、「漫画なら、コミックにまとめられたものを集めればいいのに」と思われるかもしれません。そう、確かに理論的にはそうなんですが、世の中には「もとの雑誌のまま収蔵しておく」ということにこだわる人もいるのです。雑誌の中には、「まとめて本にならないところ」というのが当然ありますし、雑誌は、「消費されて、失われてしまうはずのもの」だから、なおさら「捨てられない」という面もあるみたいで。確かに、雑誌のバックナンバーというのは、キチンとそろえるのはなかなか難しいようですから。
 僕は基本的に「ものを捨てるのが苦手な人間」で、雑誌を捨てるときも、ついページをパラパラとめくっては、「あっ、ここにこんな役に立ちそうな記事が!捨てるのどうしようかな…」なんて逡巡してしまうことばかりなのですけど、この記事を読んで、「やっぱり、本をあまりにたくさん抱えているのも考えものだな…」とあらためて思いました。
 媒体によって違うのですが、この56歳男性に関する記事には、「崩れ落ちてきた雑誌の山」に関して、けっこう具体的な誌名が書かれているものが多かったですし。

 本棚というのは、その人のキャラクターをけっこう反映しているものです。この記事には、「56歳男性公務員」というだけしか個人情報は書かれていないはずなのに、この記事を読んだ僕には、「56歳にもなってひとり暮らしの、マンガとアイドルマニアのちょっと気持ち悪い人」のイメージがパッと浮かんできましたし。まあ、僕だって似たようなものかもしれませんけど。
 スポーツ新聞の記事とはいえ、「ジャンプ」くらいならまだしも、「週刊プレイボーイ」とか、「アイドル関連本」を集めていたなんて「56歳男性」が暴露されたら、それはもう、かなりの社会的ダメージなのではないかなあ、とか、つい心配になってもしまうのです。「月刊陸上競技」も、このリストに入っているだけで、なにやら怪しげなイメージが感じられてしまうし…

 書籍フリークの皆様、お互いに日頃から「いつ床が抜けてもいいように」心がけておかなければなりませんね。縁起でもない話ですが、「火事で外から丸見え」なんてことだって、ありえるわけだから。
 僕もとりあえず、「ユリシーズ」とか「存在と時間」とかのカッコイイ本を、万が一のときのために買い集めておこうかと思います。でも、そういう本って、きっと報道されないんだろうなあ。

 何年も本棚の定位置から1ミリも動いたことがない「必要で捨てられない本」なんて、それこそ腐るほどあるんですけどねえ……